2010 Fiscal Year Annual Research Report
地方自治体の地球温暖化政策を通じた分権型エネルギー・ガバナンスの可能性と限界
Project/Area Number |
21530117
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
青木 一益 富山大学, 経済学部, 准教授 (60397164)
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Keywords | 地球温暖化対策 / 自治体政策過程 / 分権型ガバナンス / 合意形成 / 政策過程分析 / 地方自治体 / 低炭素社会 / 制度設計 |
Research Abstract |
本年度は、地方自治体が取り組む先駆的な低炭素施策の促進・阻害要因を実証的に析出し、後者の作用を抑止しつつ、前者の作用を将来にわたり持続可能なものとする、政策的・制度的措置とは何かの理解につとめた。実効性に優れるCO_2削減策を導入し、地域や都市の低炭素化を実現するには、当該対策の制度化(事業化、計画化、法制化)を通じた、ステイクホルダーの確固たるコミットメントを担保するための措置が必要となる。この点から見た従来の自治体の政策展開は、一部例外を除き、期待されたパフォーマンスの実現に成功していない。実施に至った個別技術導入事業はフィージビリティが確保されず、また、計画化・条例化された施策は、域内ステイクホルダー(住民、地域資本など)の認識・行動喚起のための十分なインセンティブ付与に至らない傾向にある。本年度は、このような現状の克服がいかに可能かを、横浜市における「環境モデル都市」指定の政策過程、スマートグリッド実証実験や「事業所計画書制度」の運用改善策の導入・実施過程などを対象とした事例研究により、実証的・帰納的に探求した。加えて、同様の課題に対して、本研究では、共有資源問題をめぐる合理的選択新制度論や税財政上のレント配分をめぐる新政治経済学およびリスク認知における行動科学などのパースペクティブから、理論的・演繹的に考察を加えた。なお、以上の課題遂行は、自治体間における政策波及のあり方をも問うことを要請する。個々の先進自治体におけるいわば「点」としての施策展開が、波及により「面」的なひろがりを持つことが、わが国全体の低炭素社会化にとって望まれるからである。この点に関して、本研究では、キャップ・アンド・トレードの導入において、当初の企図通りの制度化を果たした東京都の政策過程を事例研究の対象とすることにより、そこでの施策展開が他の自治体に波及する可能性が低いとの分析成果を得た。
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