2011 Fiscal Year Annual Research Report
地方自治体の地球温暖化政策を通じた分権型エネルギー・ガバナンスの可能性と限界
Project/Area Number |
21530117
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
青木 一益 富山大学, 経済学部, 准教授 (60397164)
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Keywords | 地球温暖化対策 / 自治体政策過程 / 分権型ガバナンス / 合意形成 / 政策過程分析 / 地方自治体 / 低炭素社会 / 制度設計 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に引き続き、わが国地方自治体における実効性の高いCO_2削減策の制度化(事業化、計画化、法制化)を促進・阻害する要因の実証的捕捉につとめた。具体例としては、分析素材を東京都が取り組むグリーン・ビルディング・プログラム(「建築物環境計画書制度」など)に求め、当該政策過程のあり方を同自治体のCO_2総量削減義務化策(キャップ・アンド・トレード)のそれと対比するとともに、両対策の相互補完的作用を通じて、大規模オフィスビルなどにおける省エネ・低炭素対策の推進にいかなるインセンティブが付与されるのかを検討した。 ここでの成果から、都における一連の対策には、CO_2大量排出源たる大都市における持続可能な(再)開発という政策命題に照らし、開発・建築事業のグリーン化および関連市場の育成を可能にし得る施策展開として注目・評価すべき側面がある反面、法的義務化と事業者による自発的対策とを抱き合わせる政策アイデアとその制度化を可能とした政策過程の固有性ゆえに、他め自治体・都市への波及可能性が低いという難点があることを指摘した。なお、本事例研究において指摘した難点・デメリットは、昨年度までに得られた事例調査成果と整合的なものとなった。 一方、昨年3月11日の東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故を契機として、原子力発電所の新増設を前提としたこれまでのCO_2削減策や地域独占下の電力供給体制のあり方に抜本的見直しを求める気運がかつてない高まりを見せた。これを受け、東京都や大阪府・大阪市などの複数の自治体において、域内における発電所建設や電力需要抑制策の推進などを通じて、電力の安定供給の確保に自らコミットする姿勢が示された。ここでの政策展開は、今後の自治体CO_2削減策の帰趨およびエネルギー・ガバナンスの分権化のあり方に直接的な影響を与えるものであるため、その動向の把握につとめた。
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