2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530131
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
吉岡 知哉 立教大学, 法学部, 教授 (90107491)
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Keywords | 市民社会 / 宗教 / 政教分離 / 政治経済 / 主権 / 自由主義 / 啓蒙主義 / キリスト教 |
Research Abstract |
本研究は、近代の政治社会が形成されていく過程で、宗教がどのように位置づけられたかを検討し、それまで価値的には第二次的な意味付けしかされていなかった現世の人間活動が、独自の自律的価値を持つものとして肯定されると同時に、政治社会が、人間の精神生活をも含む全体性を獲得するにいたる局面を、宗教(キリスト教)との関係に焦点をあて、政治思想の面からとらえようとするものである。 したがって本研究は、思想家個人の信仰問題に立ち入って、個々の思想が持つ宗教的な背景を明らかにするのではなく、近代の政治社会の形成期において、あらたな社会関係のありようがどのような「秩序」として理解され理論化されたかを、政治と宗教との関係の変容として分析するものである。以下は本年度の研究実績概要である。 1.近代のキリスト教関係の文献収集を続ける一方、主として自由主義における宗教問題を検討した。 2.市民社会論における宗教の位置づけ、とりわけ市場が自律的に秩序を構成するという考え方自体の背景となる人間観とそれを支える宗教意識を検討した。この点で重要なのは「所有property」の問題である。各個人の身体とその働きはその個人のpropertyであるとするJ.ロックの所有権論(所有と自由との結合)を、世俗社会の聖化の論理として読み直す作業が、後期の研究の一つの中心となった。 3.世俗政治社会が国家と市民社会へと「分離」する過程で、国家-宗教-「市民社会」の関係がどのように構想されるかを、19世紀自由主義の問題として検討している。 4.桑瀬章二郎[編]『ルソーを学ぶ人のために』(144頁~173頁)に、「政治制度と政治-『社会契約論』をめぐって」を執筆した(11.研究発表[図書]参照)。
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Research Products
(1 results)