2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530131
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
吉岡 知哉 立教大学, 法学部, 教授 (90107491)
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Keywords | 市民社会 / 宗教 / 政教分離 / 所有 / 主権 / 自由主義 / 啓蒙思想 / キリスト教 |
Research Abstract |
近代政治思想において、宗教がどのようなものとしてとらえられ、政治社会の構想にどのように位置づけられているかを明らかにすることは、近代政治の諸原理、近代国家と市民社会の本質を理解するためにきわめて重要である。暴力装置と直結して捉えられていた国家が、国民を統合する正統性を持つものとして自立していく過程においては、宗教的権威を様々な形で利用するとともに、自らが宗教的な権威に代替しうる宗教性を持つことが必要であった。一方、しだいに国家とは異なる原理によるものとして理解されるようになった市民社会に関しても、独自の正統性原理が必要となる。本研究は宗教(キリスト教)が、市民社会の秩序構成にどのように関係していたのかを明らかにすることを目的とする。 1.2011年度は、本研究の最終年度にあたるので、研究において得られた知見を総括することに力点を置いた。 2.前年度に引き続き、全体の文献収集を行ないつつ、近代フランスおよびイギリスの自由主義における宗教問題を検討した。 (1)当初は、19世紀の市民社会論において、宗教がどのように位置づけられているのかを検討する予定であったが、近代市民社会論の基礎となる人間観の検討過程で、「所有」と「所有主体」の問題を、キリスト教的言説との関係で把握することの必要性が生じた。このため、ジョン・ロックの契約論をあらためて検討し、personとpropertyの官営を整理した。 (2)市民社会の秩序原理を担保する道徳規範が、宗教としてのキリスト教からどのように析出されるのかを検討した。 3.フランスに海外出張を行ない、資料調査・収集を行なった。 4.宗教と近代化の問題に関する小研究会を通じて、政治思想のみならず、国際政治、イスラム政治思想、アメリカ政治史等の研究者と、多様な議論を行うことができた。同研究会において、本研究の成果の一部を、「宗教から国家へ-信仰箇条としての近代政治原理」と題して報告した。
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