Research Abstract |
限られた資源で様々な公共サービスの提供を求められる基礎自治体にとって,公民連携のあり方が政策パフォーマンスを左右すると考えられる。すなわち,専門性や機能の異なる多様な主体が相互に連携し分担しながら公共サービスを提供する,協働のあり方に規定されるのである。だが,地域コミュニティの核であった地縁組織の弱体化が進む現在,協働を促進する仕掛けの構築が求められている。本研究では,地域自治区制度を仕掛けの一つと捉え,その成功例とされる上越市と宮崎市の取組みを検討した。 二市は市町村合併を契機に地域自治区を導入し,地域課題を論じ市政に反映させる機関として地域協議会を設置した点で共通するものの,地域内の公共サービス提供促進に向けた取組みには違いが見られる。上越市では,旧上越市を除く13町村で地域住民組織を設け,地域自治区単位のまちづくりを推進する動きがあったものの,地域での組織の位置づけや活動内容には差がある。地域協議会委員選任の準公選制導入に見られるように,上越市では,意思決定への関与に重きが置かれ,公共サービス提供に向けた団体の組織化と連携という課題を残している。 宮崎市では,地域自治区設置後,地域の財源に地域コミュニティ税を導入し,その交付先として地域まちづくり推進委員会を設立した。この組織は,メンバーに地域協議会委員を加え,様々な団体を結集し,地域内の課題を総合的にマネジメントしている。総じて見れば,サービス提供という執行面を重視した制度設計であり,地域での運用もそれに沿ったものである。 二市の比較から,公民連携のあり方は自治体による制度デザインから決定的な影響を受ける可能性をもつことが確認できた。ここに独立変数としての制度が浮上するわけであるが,ヒアリング調査からは,同一市内での制度運用に違いが出ることもわかっており,その理由を明らかにし一般化することを次年度以降の課題としたい。
|