2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530145
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松岡 完 筑波大学, 人文社会系, 教授 (30209514)
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Keywords | ベトナム戦争 / ジョン・F・ケネディ / ゴ・ジン・ジェム / 冷戦 |
Research Abstract |
本研究(平成21~23年度)の総括段階と位置づけられる今年度は、外交・軍事・政治の3つの観点からケネディ政権末期、とくに1963年のベトナム政策を実証的に検証した。その結果、ケネディ政権のベトナム政策の全体像を提示する大きな手がかりを得ることができた。 第1に、冷戦外交の観点からは、部分的核実験停止条約の締結や米ソ首脳間直通回線(ホットライン)の設置など平和共存に向けて大きな前進が見られ、冷戦史の重要な分岐点ともいわれる1963年にケネディ政権がベトナムへの軍事介入にのめり込んでいった原因として、とくに米中の対立関係、および中国と北ベトナムの協力関係に着目した。その結果、グローバルな冷戦における米ソ和解とはまったく裏腹に、アジアではむしろ冷戦の主要敵として中国の存在が重みを増していたこと、そこに中ソ対立が大きな影を落としていたこと、それがベトナム戦争激化にも直接間接に影響していたこと、ケネディ政権内部には対中政策見直しの機運が皆無ではなかったもののその実現は遠い将来の課題にとどまっていたことなどが明らかになった。 第2に、ゲリラ戦争への対処の側面からは、ベトナムという重大な冷戦の戦場における米ソないし米中の代理戦争を担う存在として、ケネディ政権が南ベトナム政府軍の強化に適進したこと、それが挫折したばかりでなくアメリカ=南ベトナム間の深刻な摩擦を生んだこと、政治戦争勝利に不可欠な民心確保という側面においても成功をおさめられなかったこと、戦況の把握にすら失敗し楽観論と悲観論の対立に呑み込まれていったことなどを分析した。 第3に、南ベトナムの政治危機をめぐるアメリカ=南ベトナム関係の齪酷についても着実に研究を進めた。こうした分析の結果、きわめて大国主義的な視点に立った外交政策、挫折に直面した際責任転嫁に終始する姿勢、発展途上世界なかんずくベトナムに対する驚くべき無知と無理解などが指摘された。
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