2010 Fiscal Year Annual Research Report
北朝鮮帰国運動と日朝間の不法出入国をめぐる出入国管理の人道措置と治安対策の検証
Project/Area Number |
21530154
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
川島 高峰 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 准教授 (10386427)
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Keywords | 北朝鮮帰還事業 / 在日コリアン / 国際共産主義運動 / シベリア抑留 / 拉致 / 脱北 |
Research Abstract |
東日本震災の影響で、22年度はジュネーヴ赤十字国際委員会の史料調査を実施することができなかった。しかし、これまでの資料収集から、戦後の日本における在日朝鮮人の法的な地位の問題が、日本と朝鮮半島の間での不法出入国の問題と極めて密接な関わりを有していることが確認できた。従来、この問題は、専ら、日本の敗戦と独立講和に伴う在日朝鮮人の法的地位の変化に起因し、これに民族差別が重なることで問題を深刻化させてきたと認識されてきた。本研究もこの見解に沿うものではあるが、当時の出入国管理をめぐる資料の精査から、在日朝鮮人の地位問題のもう一つの重大な要因として、日本と朝鮮半島の間における大規模な不法出入国の問題があったことを確認することができた。このことは統計的な資料からも確認することができた。1950年代の在日朝鮮人は、戦後になってからの密入国者が、少なくとも10万人前後存在しており、これに戦後生まれの在日がやはり、10万人以上ある。つまり、戦後流入と戦後生まれを合わせると20万人以上がいたと考えられ、これは当時の在日朝鮮人の少なくとも三分の一に該当するものであった。北朝鮮帰国事業を考えるに際し、どのような人々が帰国したのか、その母集団全体の性格について基本的な事実関係から再考すべきであることを確認できたことは、非常に大きな成果であった。 今一つの成果は、独立講和を契機に韓国による日本漁船拿捕が激増し、韓国に多数の日本人漁師が抑留されることとなり、これが北朝鮮帰国事業の開始を止まらせた最大の要因となったが、この時の日本漁船拿捕が極めて強引であり、日本の被害の実情が深刻であったことを詳細に確認したことである。これにより帰国事業に激しく反対していた韓国は日本に帰国事業に踏み切ることを抑止し得たことを明確にすることができた。
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