2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530156
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
青山 瑠妙 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (20329022)
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Keywords | 政治学 / 外交 / 国際関係 |
Research Abstract |
今年度は、冷戦終結後における中国の「周辺外交」戦略ならびにその展開プロセスについて論文をとりまとめるとともに、学会において報告を行った。 この1、2年、中国の対外政策が強硬になりつつあると一般的に言われているが、冷戦終結後の中国の周辺外交政策の変遷プロセスを探求することにより、筆者は中国の周辺外交の連続性と変化の解明に努めた。中国とアジアとのかかわりは、冷戦終結直後から中国の経済発展戦略と深く関係しており、北東地域、西北地域及び西南地域の対外開放戦略は中国の周辺外交の展開を左右している。他方、こうした内陸部の対外開放戦略の進展により、地方政府も中国の周辺外交に深くかかわるようになり、中国の対外政策形成上の重要なアクターとなりつつある。 また、怒江ダム開発をケーススタディとして、周辺外交の展開によって生じた対外問題にかかわる国内政策形成の変化に関して析出を試みた。具体的には、怒江ダム開発をめぐる中国国内世論の動向の分析を通じて、中国の世論はその政治体制-分断化された権威主義体制-によって強く拘束されていることが浮き彫りとなる。 中国と他国との間で外交摩擦が生じた場合は、中国の国内に浮上するナショナリズムが注目されやすい。しかし、怒江ダムのケースで明らかとなったのは、中国の国内世論は極めて多様化しており、こうした多様な世論が中国政府の対外行動様式を規定していることである。言い換えるならば、国内世論のこうした特徴から、非伝統的安全保障分野における中国政府の対外行動様式は「漸進的な国際協調主義」と位置付けられるものといえよう。
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