2009 Fiscal Year Annual Research Report
持続可能な福祉と世代間衡平性:社会的選択理論の視点から
Project/Area Number |
21530163
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
篠塚 友一 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 教授 (40235552)
|
Keywords | 持続可能性 / 福祉 / 社会選択 |
Research Abstract |
本研究は上條良夫・釜賀浩平両氏との共同研究で,各世代の効用を特定化した効用の無限流列を社会状態の評価の情報的基礎とする「厚生主義」の立場から世代間衡平性の問題を考察したものである。有限人からなる社会の状態を厚生主義の立場から評価する基準として,効用の総和に基づいて社会状態を比較する「功利主義的な社会的評価関係」,最も不遇な個人の効用に基づいて社会状態を評価する「マキシミン原理による社会的評価関係」あるいはそれを辞書式に拡張した「レキシミン原理による社会的評価関係」などが公理主義的な立場から研究されてきた。世代間衡平性の厚生経済学研究の文脈で,Asheim and Tungodden (2004, ET), Basu and Mitra (2007, JET)およびBossert, Sprumont and Suzumura (2007, JET)が,功利主義およびレキミン原理を無限効用流列の比較に適用する方法を提案し,それらを公理的に特徴づけした。我々はこれらの先行業績とは異なる視点から,功利主義およびレキミン原理を無限効用流列の比較に適用する方法を導入する。kを世代数を表すパラメーターとする。我々は,全世代の集合を,連続するk世代からなる「部分社会」に分割し,それぞれの部分社会に対応する効用の有限流列の比較に関して通常のレキシミン原理を適用する。そして,二つの効用の無限流列に対して,全ての部分社会が一方の効用の無限流列を他方より選好することに合意する場合に,前者が後者より社会的に選好されるという「コンセンサスにもとづく社会的評価関係」を提案し,公理主義的に特徴付けた。Bossert, Sprumont and Suzumura (2007, JET)のレキシミン原理の公理的特徴づけに使用した公理系に,我々が新たに導入した公理【固定ステップによる整合性】を追加することで,Bossert, Sprumont and Suzumura (2007, JET)のレキシミン原理による社会的評価関係の拡張に成功した。
|
Research Products
(1 results)