2011 Fiscal Year Annual Research Report
持続可能な福祉と世代間衡平性:社会的選択理論の視点から
Project/Area Number |
21530163
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
篠塚 友一 筑波大学, 人文社会系, 教授 (40235552)
|
Keywords | 世代間衡平性 / 選好の連続性 / マッキー位相 / 世代の連続体 |
Research Abstract |
異時点間の資源配分の評価には、可能な資源配分の集合上で定義された社会的選好関係ないし社会的厚生関数が必要である。連続時間の枠組みにおいて、フランク・ラムゼーは、各時点における社会的厚生と社会的厚生の「至福」水準との差の積分によって、社会的厚生関数を定義した。ラムゼーは、将来効用の割引には反対した。将来効用の割引によって、全世代を平等に処遇するという世代間衡平性の要請が満たされなくなるためである。しかし、ラムゼーが定義した社会的厚生関数は、いかなる「標準的」な位相に関しても不連続となる。この結果は、世代間衡平性と社会的厚生関数の連続性の要請との間のトレードオフを示唆する。実際離散時間の枠組みにおいてピーター・ダイアモンドは、社会的選好関係が直積位相に関して連続なとき、社会的選好関係がある種の非耐忍(impatience)現象を示すことを明らかにした。この研究は、世代間衡平性への公理的研究のきっかけとなった重要な成果である。しかし、世代間衡平性に関する公理的研究は、これまで離散時間の枠組みに限られてきたため、ラムゼーの衡平性と連続性の間のトレードオフ現象の原因を公理的視点から十分に解明したとは言い難い水準にある。そこで、我々は、個人の集合が連続体をなす場合のナッシュ社会的厚生関数に関する金子守の研究で使用されたテクニックにヒントを得て、連続時間の枠組みで、世代間衡平性の公理を定式化することに成功した。そして、マッキー位相に関する社会的選好の連続性の要請と世代間衡平性の要請を満たす社会的選好関係は、全ての消費経路を無差別とみなすことを証明した。この結果は、離散時間の枠組みでShinotsuka(Social Choice and Welfare, 1998)が証明した不可能性定理の連続時間バージョンとみなすことができる。
|
Research Products
(2 results)