2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530166
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
塩路 悦朗 一橋大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (50301180)
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Keywords | 経済理論 / 金融論 / 経済政策 / 不確実性 / マクロ経済学 / 経済成長 / 公的投資 / 時系列分析 |
Research Abstract |
平成23年度は不確実性とマクロ経済の関係に関する研究を大きく発展させ、これをほぼ完成させた。最大の成果としては、災害によって資本ストックが破壊された後に公的投資がマクロ経済に及ぼす効果に関する研究を新たに開始し、既に年度中に一定の成果を挙げた。平成23年3月の東日本大震災は、大規模災害こそ国民経済が直面する不確実性の最大の源泉の1つであることを我々に再認識させた。このため、上記研究を新たに立ち上げ、その成果を日本経済学会で報告した。同論文は同学会による冊子上に刊行予定。またこの研究に日本の公的投資の効果に関する時系列分析を盛り込んだものを、平成24年3月に米国デューク大学で報告した。 震災の経済的損失は大きなものであったが、生産統計で見る限り、リーマンショックによる景気悪化の方がはるかに大きなものであった。平成23年度は、平成22年度に引き続き、このショックによる不確実性増大がなぜ日本経済に特に大きな影響を与えたのかを解明する研究を続行した。時系列分析に新たな変数を加えると同時に、新たに国際比較の側面を取り入れた。この成果は平成24年2月に米国コロンビア大学において、歴史あるJapan Economic Seminarの中で報告する機会に恵まれた。この時に得たコメントを基に論文を改訂中であり、近日中に国際学術誌に投稿する。 日本経済が直面するもう一つの大きな不確実性は為替レートの変動である。さらに中国など新興国における生産費用の変化(賃上げなど)から受ける影響も増しつつある。これを考察するため、双方寡占モデルという新しい考え方を初めて国際マクロ経済学に導入した。また同モデルの含意を日本の輸入物価データから検証した。同研究は日本銀行ワーキングペーパーとして発表され、現在改訂中である。この他、家計の資産選択に関する平成22年度の研究を米国コロンビア大学で報告した。同研究に基づく新成果が平成24年度日本銀行コンファレンスで報告される。
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