2011 Fiscal Year Annual Research Report
M&Aにおける被買収企業の株式所有構造と取引プロセス
Project/Area Number |
21530179
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
小林 磨美 近畿大学, 経済学部, 准教授 (40411566)
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Keywords | 市場リスク / 金融機関 / レポ市場 |
Research Abstract |
金融機関に対する資金提供者の機関化・大型化に伴い、金融機関の投資行動は金融市場の影響をより受けやすくなっている。このことを踏まえ、本年度は、金融市場におけるリスクが金融機関の投資行動に影響を与えることをミクロ経済学的に分析し、それが企業のM&Aにどのような影響を及ぼすかを考察した。 金融機関の本源的な特徴のひとつであるリスク転換機能とは、低リスクの短期負債により調達した資金を比較的長期で高リスクの投資に充てることである。短期の資金提供者として伝統的には預金者がこれに相当したが、近年では銀行などの金融機関やヘッジファンドなどの金融会社が資金提供を行っている。これらの短期的な資金提供者は一時的な余資の預け先として金融機関を利用することから、預金者と同じく金融機関の返済能力にかかわらず元本を引き出せる契約のもとで資金提供を行っており、しばしば機関預金者と呼ばれる。ところで伝統的な預金者と異なり、機関預金者は短期金融市場を中心とする金融市場の参加者であることから、金融機関に対する要求利子率が市場利子率の変動に影響される。市場リスクの上昇を受けた利子率のもとで借り入れを続けるためには金融機関は企業に対する貸出利息を上昇させるか、当該企業を買収できるほかの企業に売却する必要に迫られる。 本研究の前半では、主に金融機関と機関預金者との関係を中心とした理論モデルを構築し、将来時点における金融市場のリスクが現時点における金融機関の短期負債比率を決定することを導出した。またリスクに不確実性が存在する場合、金融機関の投資先の破たん懸念にかかわらずその信用リスクが上昇する場合があることを導出した。これらについてはFinancial Contagion through the Repoとしてまとめ、発表した。
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