2011 Fiscal Year Annual Research Report
ボウレイとレイトンの統計学方法論の研究―マーシャル経済学の展開とその応用―
Project/Area Number |
21530184
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
近藤 真司 大阪府立大学, 経済学部, 教授 (50264817)
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Keywords | ケンブリッジ学派 / マーシャル / ボウレイ / レイトン / 統計学方法論 / LSE |
Research Abstract |
本研究の目的であるアーサー・レオン・ボウレイ(Arthur Lyon Bowley,1869-1957)とウォルター・レイトン(Walter T.Layton,1884-1966)の統計学方法論をとりあげるにあたって,今年度はボウレイとレイトンの両者とマーシャルとの継承関係を中心に研究を進めた。 最初に,レイトンの研究に関しては'Layton on industrial and applied economics'という論文が掲載されているT.Raffaelli, T.Nishizawa, S.Cook編集のMarshall and Marshallians on Industrial Economics, Routeledge, 20111が出版された。本論文ではケンブリッジ学派におけるレイトンの位置づけを行い,彼をマーシャルの経済理論を現実に応用した人物であることを明らかにした。さらにマーシャルの方法論を取り上げ,レイトンは彼の帰納法論を受け継ぎ自らの著作である『物価研究入門』において展開したことを明確にした。また,マーシャル経済学における応用経済学的な側面にも注目する必要性を主張した。 次にボウレイの研究に関してであるが,2011年12月に神戸大学で開催された経済社会学会西部部会において,「マーシャルとボウレイの統計学方法論」というタイトルで報告を行った。本報告では統計学の歴史において,マーシャルやボウレイの統計学に注目する必要性を指摘し,ボウレイはマーシャルの影響を受け社会改革との関連から経済学に関心を持ち,統計学的手法を経済学の分野に活かした開拓者であることを明らかにした。さらに,両者は貧困問題の解決に関心を持ち,統計学の重要性と経済統計学の発展の認識を共有していたことも論じた。両者の相違点は,統計学方法論において明らかになるが,マーシャルは帰納法と演繹法を一体のものと考えているのに対して,ボウレイは分離するものと考えていることを指摘した。両者の方法論の違いは,経済学者マーシャルと統計学者ボウレイの違いであることを明らかにした。本報告での学会でのコメントを元に原稿を執筆し,学会誌に投稿することを準備している。 ケンブリッジ学派研究に関してであるが,「マーシャル,ピグーとケンブリッジの経済学者」(水田健・喜多見洋編著『経済学史』ミネルヴァ書房,2012年)がこれまでの研究成果として出版された。
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