2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530186
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
池田 幸弘 Keio University, 経済学部, 教授 (80211720)
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Keywords | カール・メンガー / オーストリア学派 / ルドルフ皇太子 / 経済的自由主義 / ヴィーン大学 / ハプスブルク帝国 / オーストリア / 限界主義 |
Research Abstract |
研究は研究代表者が近々刊行予定のカール・メンガー伝の準備作業である。平成二十一年度は、ヴィーン大学文書館、一般行政文書館、ヴィーン市・ヴィーン州文書館などを訪問し、一次資料の収集に従事した。そのすべてについて述べることはできないので、以下二点の資料に限定してその評価を行う。メンガー家は本来ガリチアの出身だが、本研究ではヴィーン市・ヴィーン州文書館所蔵の資料によって、メンガーのヴィーンにおける住所を特定した。この資料によって年ごとの居住地の確定は可能である。より詳細な転居の日付についての情報はここからはとれないが、いくつかのケースについてはメンガー自身がその備忘録風の日記のなかで述べているので、その場合は転居の日付の特定も可能である。ヴィーンでの度重なる転居の理由は不明だが、一般的にこれがどの程度特殊なのかは歴史研究の立場から他の例と比較検討する必要があろう。賃借していたと考えられるが、そうであれば当時の契約の条件も考慮しなければならない。またさらに、一般行政文書館においては、ルドルフ皇太子にたいする授業に関連して、メンガーがフランツ・ヨーゼフにあてた文書(1875年9月30日付)を閲覧した。この資料は彼が皇太子にたいしてどのような講義を施したかということを超えて、メンガーの教育観、経済学観がうかがわれるという意味できわめて興味深いものである。メンガーは皇帝に、経済学における「自由貿易論者」と「保護主義」、そして「個人主義者」と「倫理主義者」との対立について解説している。双方の対立軸ともに当時のドイツ語圏での思想的対立を表現したものにほかならない。そのような対立軸のなかでメンガーが自分自身の立場をどのように規定しているかは重要で、同資料は公刊された文献とあわせて彼自身の政策的見地を特定するのに役立つだろう。
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Research Products
(3 results)