2010 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀前半ケンブリッジにおける経済学 ―反発・受容・変容
Project/Area Number |
21530189
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Research Institution | Kaetsu University |
Principal Investigator |
久保 真 嘉悦大学, 経営経済学部, 准教授 (30276399)
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Keywords | 経済学史 / イギリス / 方法論 / 統計運動 |
Research Abstract |
昨年度(平成22年度)の成果は主として三点である.1.一昨年度に行った資料調査の結果の一部を踏まえ,経済学史研究の国際的中心をなすジャーナルであるHistory of Political Economy誌に投稿していた論文の改稿を行った結果,当該論文が受理(掲載許可)された.ここで明らかにしたことは,ケンブリッジ大学のプライムの経済学講義が,その内容において,エディンバラ大学のステュアートがすでに行っていた経済学講義をモデルにしたものであり,そのことがケンブリッジ大学に経済学教授職を設立せしめる一要因となったことである.なお掲載は,平成24年度になる見通しである.2.同資料調査の結果の一部を分析し,その成果を豪州経済学史第23回大会にて"The Scope and Method of Political Economy in the Early Nineteenth Century"と題して報告した.ここで明らかにしたのは,従来ケンブリッジの卒業生たちが指導したとされる1830年代のイギリス統計運動が,社会科学の方法的革新を企図する西欧全体に広がりをもつ遙かに大きな運動の一部として解釈しうるということである.3.同資料調査の一部を利用した研究成果を,『イギリス経済学における方法論の展開』(只腰他編,昭和堂)の第三章「ヒューウェルとジョーンズ,そして『帰納科学としての経済学』」として発表した.ここで明らかにしたことは,従来「ケンブリッジ帰納主義者」として経済学史上一括されてきたヒューウェルとジョーンズが,経済学方法論において,実はかなり早くから思想的隔たりがあったことである.
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