2011 Fiscal Year Annual Research Report
80年代以降の家計行動及び世帯構造についての実証研究―ミクロデータを用いた分析
Project/Area Number |
21530202
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
村田 啓子 首都大学東京, 教授 (90526443)
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Keywords | lifetime employment / seniority-based wage / 若年労働市場 / 贈与・相続 / 格差 / 生涯資産 / 世代間移転 / Japan |
Research Abstract |
1.データベース作成作業 総務省「家計調査」のパネルデータ化及び旧貯蓄動向調査についても居住地域等得られる情報を活用し個票レベルでのマッチング作業を実施し、パネルデータ化・マッチングを定型化しその手法を精査。 2.実証的研究 引き続き家計の消費・貯蓄行動に影響を及ぼす生涯所得と関連した実証研究を行った。前年度までの研究成果((1)低成長と日本的雇用慣行の変化、(2)新卒時におけるマクロ経済環境がその後の就業状況に及ぼす効果(「初職効果」))を改定し公表するとともに新たなミクロデータを用いて以下のディスカッションペーパーを共著として公表。 1)我が国世帯における世代間移転と資産格差 前年度に内閣府経済社会総合研究所において実施した『家族関係、就労、退職金および教育・資産の世代間移転に関する世帯アンケート調査』の個票を用いて、資産移転の受取額と受取世帯の経済力の関係を定量的に推定。世帯の経済力を世帯主の年間収入で測る場合,裕福な世帯ほど親からより多くの資産移転を受けており,世代間移転により格差は拡大の恐れがある。一方、世帯の経済力をライフサイクル資産額で測ると,格差拡大の量的効果は限定的であることが示唆された。 2)退職一時金の実態と決定要因 日本の勤労者世帯の家計にとり退職一時金は生涯所得の観点からも無視できないにもかかわらず、その受領実態は家計経済研究の分析対象とはされて来なかった。1)と同様のアンケート調査の個票を用い、個別世帯が受給した退職一時金の実態、将来の退職金への期待、及びそれらの決定要因に関し計量分析。退職金受領額は企業規模や勤続年数の増加関数である一方、退職金月収比の学歴格差は、高卒と大卒間では差がない。退職金受領期待は概ね受領実態を反映するが、そのあり方は個人の学歴と相関している。中卒労働者の期待は実績に比べかなり低めだが、高卒者の期待は実績相応、大卒者の期待は実績を上回る。
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