2011 Fiscal Year Annual Research Report
中国とG7諸国における為替レート、貿易構造、貿易収支
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21530214
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
XING Yuqing 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (80288232)
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Keywords | China / exchange Rates / processing trade / supply chains / iPhone |
Research Abstract |
加工貿易は、特殊な形態の貿易である。中国の貿易黒字の内訳を通常の貿易と加工貿易に分解すると、加工貿易だけで貿易黒字の全体を担っていることがわかる。1993年から2008年にかけてみると、その間の中国の年間貿易黒字100%が加工貿易によるものである。中国の加工貿易には地域により激しい偏りがある。2008年の加工輸入の77%は東アジアからだが、東アジア向け加工品輸出はたった26%であった。記述統計学によると、東アジアは加工品原材料の主要な輸入元で、それ以外の地域、特に米国や欧州などが加工品の輸出先市場となっている。この特殊な貿易パターンは、当地域の東アジア経済の多国籍企業が構築した生産ネットワークの役割を反映しており、貿易黒字が東アジア経済地域から中国へ移動していることを示している。 国固定効果を利用した重力モデルを用いて、加工貿易の輸出入に対する人民元切上げの影響を研究する。具体的には、人民元が実質10%上昇した場合、中国の加工品輸出が9.1%減少するだけでなく輸入も5.0%減少する。経験的に人民元切上げは、加工品輸出を弱めるだけでなく輸入も減退させるため、人民元切上げが起こると、加工貿易の輸出、輸入ともに減少する。この輸出入両面に対して為替相場高騰が及ぼす対称的な影響は、加工貿易特性を浮き彫りにしている。従って、加工貿易のバランスに対する人民元切上げの複合効果は非常に限られると結論する。この場合、人民元切上げはグローバル・インバランスに対して大きな影響を持たないということである。 また、iPhoneを例に、米国企業が発明したハイテク商品でさえ米国の輸出を増やさず、むしろ貿易赤字を悪化させる事を説明する。iPhoneは米国に19億ドルの対中貿易赤字をもたらした。前例のない国際化、世界的生産ネットワーク、全国生産フラグメンテーションの急速な発展、輸送費の安さ等がすべて、Appleのような合理的企業が米国貿易赤字の悪化に直接つながるビジネス決定の要因になっている。世界的生産ネットワークと高度に専門的生産プロセスは、明らかに貿易パターンを覆している。中国のような新興国がiPhoneのようなハイテク商品を輸出する一方で、米国のような先進工業国が自ら発明したハイテク商品を輸入する。加えて、従来の貿易統計が、多国籍企業の輸出基盤となる国とその輸出先となる国との二国間貿易黒字を大きく膨張させる。
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Research Products
(5 results)