2011 Fiscal Year Annual Research Report
日米低費用航空会社の競争行動と市場成果の計量経済分析
Project/Area Number |
21530219
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
村上 英樹 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (90243295)
|
Keywords | 低費用航空会社(LCC) / 推測的変動 / マルチマーケット・コンタクト / クールノー競争 / ベルトラン競争 / 総余剰 / New Empirical Industrial Organization |
Research Abstract |
23年度の研究は大きく分けると2点に絞られる。まず1つ目は、米国航空産業における低費用航空会社(以下LCC)の参入後の競争行動並びに市場成果の時系列的変化を研究したことである。競争行動に関してはBresnahan(1981)モデルを用いて、推測的変動(LCCがライバル企業に取った対抗行動、並びにその逆)を1996~2000年のデータを用いて計測した。具体的には、参入初年度はLCCとライバルの大手企業は互いに激しい価格引き下げ競争を行うが、やがて若干ながら競争は緩和されていくことが判明した。競争形態は、初期はベルトラン型価格競争、競争開始後4年ほどでクールノー型顧客争奪競争に転じた。なお、Bresnahan(1981)モデルはCorts(1999)の研究により批判されたが、Puller(2009)によりBresnahanモデルが理論的に解釈可能であることが示され、本研究はPullerモデルを計量経済モデル化し、実際に推測的変動の計測を行った最初期の研究であるとみなされる。また、総余剰の経年変化は、路線別に見て消費者余剰の増加が企業の損失を大幅に上回り増加するケースと、過当競争により企業の損失と消費者余剰が均衡し、長期的に総余剰の変化が見られなかったケースも存在した。 また、2つ目のテーマとして、Bernheim and Whinston(1990)により理論的提唱が行われEvans and Kessides(1994)により計量経済学的に分析されたマルチマーケットコンタクト理論(複数の市場において対峙する企業同士が、地理的あるいは時系列的に頻繁に競争を行う結果となることを示した理論、以下MMC)を、米国航空産業に適用した。従来の研究が同一規模の企業を対象としていたのに対し、本研究では大手航空会社対LCCの競争を取り上げ、複数提唱されたMMC理論的手法を用いて、初めてMMCが大手航空会社とLCCとの間でも計測されるかどうかを研究した。その結果、大手航空会社同士の競争においてはMMCが観察されたけれども、LCC対大手航空会社、並びにLCC同士の競争では、MMCは観察されなかった。
|