2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530221
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
神事 直人 京都大学, 経済学研究科, 准教授 (60345452)
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Keywords | 再生可能資源 / GATT/WTO / 漁業補助金 / エコラベル |
Research Abstract |
まず,前年度に行ったWTOにおける漁業補助金に対する新たな規律が漁獲量や資源の保全に与える影響に関する理論分析を更に精緻化した.特に,前年度の研究は静学的な分析に限定していたが,漁業資源のダイナミクスを考慮した動学的な分析を取り入れた.その結果,漁業補助金の削減は,資源管理が行われていない国で短期的には漁獲量を増加させる可能性があるものの,長期的には資源ストックを減少させ,漁獲量も減少させることを示した.この研究成果は水産資源経済学の分野で国際的にも著名な査読付学術誌であるMarine Resource Economics誌に掲載された.またWTOにおける国際交渉で日本政府が提出した資料の中で本研究に言及された, 次に,産品非関連PPMsに基づくエコラベルを通じた消費者への情報伝達および産品非関連PPMsに基づく貿易制限.措置が再生可能天然資源の国際貿易に与える影響について理論的分析を行った.例えば漁業資源がどのような漁法で漁獲されたかということは産品非関連PPMsに当たるが,それは消費者が消費後もその品質を認識できない「信用財」としての性質を有している.その上で,消費者が産品非関連PPMsを財の特性として認識する場合には,産品非関連PPMsに基づくエコラベルは経済厚生を改善する可能性があるものの,財の物理的特性に違いがない限り,産品非関連PPMsに基づく貿易制限措置は偽装された保護貿易の手段として機能しうるものであることが示された. さらに,前年度までの研究を発展させる形で,途上国企業による社会的ダンピングが先進国企業と消費者に与える効果について幾何学的な分析を行うとともに,社会的ダンピングに対する貿易政策である「社会的条項関税(social clause tariffs)」の効果について分析した.これらの分析結果はそれぞれ論文にまとめ,査読付学術専門誌に投稿した.
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