2010 Fiscal Year Annual Research Report
多国間経済連携協定締結交渉における知的財産権の戦略的活用
Project/Area Number |
21530223
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岡村 誠 広島大学, 大学院・社会科学研究科, 教授 (30177084)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 三樹 広島大学, 大学院・社会科学研究科, 教授 (70184538)
越智 泰樹 広島大学, 大学院・社会科学研究科, 教授 (90204221)
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Keywords | FTA / パテント / 知財権 |
Research Abstract |
本年度は3つの論文を作成し国際的学術誌に掲載した。 1.Zhao,岡村論文 先進国と開発途上国とのoutsourcingを含んだ経済モデルを作成した。先進国は知的財産権によって保護された製品を国内で生産するが,一部の部品を開発途上国で現地生産し,それを再輸入して完成品を作り,それを開発途上国に輸出する。国内の労働市場では労働組合が存在し,企業との間で労働条件を交渉する。開発途上国の政府は国内の経済厚生を最大化するように完成品の輸入に関税をかける。その際に関税率を上げれば,部品の輸入が減少し,その結果,国内の雇用が減るという問題に直面している。先進国は複数存在し,開発途上国市場でクールノー競争を行っている。このモデルのナッシュ均衡を求めることによって,先進国と開発途上国の経済厚生水準と関税率,ならびに両国の雇用水準を求めた。 2.岡村,大川,倉田論文 市場規模の異なる二国国際貿易モデルを分析した。全く同一の生産技術を持つN社の企業が二国間で立地を決定する。次の二段階ゲームを考えた。第一段階では,企業が生産拠点を決定する。その際企業は一つの国でしか生産拠点を持てない。第二段階では,生産拠点の分布のパターンを所与としてそれぞれの国の市場で企業でクールノー競争を行う。この市場の完全ナッシュ均衡を求めることによって,モデルの均衡立地パターンとその生産量を求めた。さらに政府が企業の立地パターンのみを決定できる次善の意味での効率的な状態を求めた。その結果均衡においては,企業は市場規模の大きな市場に過剰に立地することを明らかにした。 3.岡村,大川,紀国論文 知的財産権によって独占を保証された耐久財モデルを考える。Waldmanの考えに基づく二期間モデルを考える。企業は毎期耐久財を生産する。耐久財に関する強い好みと弱い好みを持つ二種類の消費者が存在する。耐久財についての中古市場が存在し,消費者は耐久財のメンテナンスを行うことによって,その品質を改善できる。このメンテナンスと中古市場が同時に存在するモデルにおいては,従来観察されなかった反陳腐化現象,すなわち社会的に見て耐久財の品質が過剰に高くなることを明らかにした。
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