2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530231
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Research Institution | Atomi University |
Principal Investigator |
丹野 忠晋 跡見学園女子大学, マネジメント学部, 准教授 (40282933)
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Keywords | 公共調達 / 入札談合 / オークション / 非対称 / 公正取引委員会 / 勧告・審決 |
Research Abstract |
平成23年度は研究期間の3年目に当たり入札談合に関する多方面の研究がさらに深まった.まずは理論パートでは非対称オークションの論文Linear Bid in Asymmetric First-Price Auctionsの完成度を上げて国内の学会で発表した.九州大学の三浦功教授から貴重なコメントを頂きそれを元にさらなる改訂を行った.オークションに非対称性が入った場合の効率性と期待収入についての分析とその場合の境界条件の導出が主な研究内容である.オークションの分野では対称オークションを中心としたオークション制度間の収入の比較が大きな研究領域になっているので,この成果は簡単の状況での分析ではあるが独自の意義がある.関連する研究を行ったKaplan and Zamir(2012)'Asymmetric first-price auctions with uniform distributions:analytic solutions to the general case'Economic Theoryが出版されたようにまだまだこの分野は発展途上に有り本研究は一つの収入や効率性の比較検討として重要性を持っていると考えられる.今後は査読誌への掲載を目指し且つこの基本モデルを元に談合の分析を行う予定である. 第二の研究目的である入札談合の実証分析では,平井貴幸氏と共著である自治体における談合時と競争時の入札率や落札率の違いを分析した.その結果は「ある自治体における公共調達の入札価格分析」に纏められたが,競争後の新規参入の価格下落への強い効果を既存研究の結果と同様に確かめられた。さらに談合から競争に至る過程を詳しく分析したところにオリジナリティーがある.その過渡期では観察された非談合企業の高い勝率-入札数に対する落札数の割合-が大きく市場を競争的にした事を発見した.この知見は今後談合を防止する大きなヒントを与えることになうと考えられる. 第三の研究目的である公正取引委員会の勧告・審決の分析はデータの蓄積を行った.勧告文を読み解くのは時間が掛かりまとまった量にはなっていない.しかし,合計20年近い期間で談合やカルテルの推移を一瞥すると談合事件がカルテルの大きなウエートを占めるのはつい最近のことなど興味深い事実が分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論パートとファクトファインディンは遅れているものの実証分析ではある程度の成果が生まれている.総合すると概ね順調と言える.前者が遅れている理由は,理論パートについて非対称性が入ったオークションでは独特の難しさが有り既存の定理を単純に応用する術は使えないことにある.ファクトファインディングではデータの構築に時間が掛かることが遅れの原因である.しかし,実証研究の進み具合は他の二つの目的を凌駕していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は理論モデルの拡張を中心に進めていく。非対称オークションの論文は査読誌への掲載を目指す.その基本モデルに談合を付け加えた理論は簡単な2期間モデルでも良いので基本的なものを完成させる。英文化を行った実証パートの論文は海外での学会発表を計画している.できるだけ早く査読誌への投稿を目指したい.ファクトファインディングではデータの蓄積が不十分なので,取りあえずは中間報告の形の論文を仕上げる.今後数年をかけてデータを整理してその中から重要な談合やカルテルの傾向を探りたい.
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