Research Abstract |
本研究の目的は,中国の地域開発政策が地域格差縮小にどれだけ貢献できたかを,労働を考慮した地域間産業連関モデルによって計測することにある。 最終年度である平成23年度は,暫定的な地域間産業連関表とその分析結果を作成した。9月にはその結果をもって,ロンドン大学とOECDの専門家と意見交換するとともに,10月日本地域学会,12月応用地域学会にて報告,発表した。昨年度作成した地域間産業連関モデルは2007年を対象にして1部門31省で推計を行った。今回は昨年度の研究成果を用いて,地域間距離の推計を再度行うと共に3部門の地域技術系数を推計して,3部門31省の地域間産業連関モデルを構築した。また地域間交通網の発展データを用いて1987年,1992年,1997年,2002年,2007年の5時点の中国地域間産業連関データベースを作成した。この地域間産業連関データベースを用いて,中国の地域開発をハーシュマンの浸透効果と分極効果の考えを利用しながら分析を行なった。とくにネットワーク分析において,広東,江蘇,浙江,山東が中核地域であることがわかり,その上内陸部においても湖北省や四川省は中核地域として存在が増していることがわかった。生産波及効果や雇用波及効果においても中核地域から周辺地域への浸透効果は分極効果は上回っており,生産と雇用の面で地域間格差の縮小が観察された。付加価値の仮想交易についての推計では,世界システム論のウォーラーステインが指摘するような周辺地域から中核地域への付加価値移転が見られるが,時系列でみてみるとその移転量は減少している。ここから,中国の地域開発政策は地域格差縮小に貢献していることがわかったのである。 以上の研究成果は過去の研究成果と合わせて平成24年度に単著として公開する予定である。
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