2009 Fiscal Year Annual Research Report
ネットワーク産業におけるインフラ整備と市場構造の変遷に関する研究
Project/Area Number |
21530243
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
水野 敬三 Kwansei Gakuin University, 商学部, 教授 (40229703)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松島 法明 大阪大学, 社会経済研究所, 准教授 (80334879)
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Keywords | ネットワーク / インフラ建設 / 企業間提携 / 接続 / 民営化 |
Research Abstract |
本研究の目的は,情報通信,都市ガス,電力等のネットワーク産業におけるインフラ整備を通じた市場構造の変遷に関する理論モデルを構築し,そのモデルを用いて均衡分析と経済厚生分析を行うことである.平成21年度は「インフラ建設のための企業間提携と接続の理論分析」と「ネットワークの民営化」の2つの問題に焦点を当てて研究を進めた. 「インフラ建設のための企業間提携と接続の理論分析」については,具体的な設問として「接続料金が費用回収ルールに従っているとき,既存事業者と新規参入者の間の企業間提携がインフラ建設誘因と生産量競争にいかなる影響を与えるか」を取り上げ,理論モデルを構築して分析した.理論分析から,費用回収率が低い接続料金ルールが採用されたときには,生産量競争の結果,企業間提携によるインフラ建設よりも既存事業者だけでインフラ建設を行うほうがインフラ建設誘因は大きいことがわかった.費用回収率が高い場合はその逆となる.また現実の政策現場で頻繁に採用される増分費用回収ルールの場合,企業間提携によるインフラ建設のほうが社会的には望ましいインフラ建設誘因が導かれることが明らかとなった. 「ネットワークの民営化」問題では,航空インフラとしての空港の民営化問題を具体的事例として分析を進めた.これは垂直的市場構造を視野に入れたインフラ建設誘因の理論分析の一環である.労働組合の交渉力が低いとき,社会的経済厚生の視点から空港が民営化されるべきであることが,理論分析により明らかとなった.これは80年代以降の空港民営化議論の根拠を説明する理論分析であると考えている.ただし,現行の理論モデルでは空港間の競争を考慮していないので,今後は空港間競争を考慮した分析に拡張させる予定である.
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