2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530261
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大住 圭介 九州大学, 経済学研究院, 教授 (10109621)
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Keywords | 社会的インフラ / 持続的成長 / イノベーション / 環境 / R&D |
Research Abstract |
知識基盤経済を的確に描写すると想定されるイノベーションを伴う内生的成長モデルに環境要因を導入して、環境汚染と経済成長に関する理論分析とデータに基づく分析を行った。ついで、経済成長モデルにおいて共通に設定されている無限時間視野についてのモデル構造上の理論的改良を行った。最後に、OLGモデルのもとで、貧困と成長の問題を考察した。具体的には、次のような点で先行研究の議論の拡張を行った。 (1)経済学研究院の谷助教、ショウ氏(博士課程)と共同研究を行い、環境要因と経済成長の関連についての理論的・実証的分析を行った。具体的には、アセモグル(2002)の偏向的技術進歩の議論を援用して、環境要因とイノベーションを内生的成長モデルのフレームワークに組み込み、環境と成長の問題を理論的に考察した。さらに、中国、韓国、日本における環境汚染と経済成長の関連について種々のデータの解析を行い、11月に開催された2010 AECFにて、報告を行った。 (2)経済成長の問題を考察するために、経済理論の文献では時間視野として無限時間視野が通常使用されている。無限時間視野の問題を現実的な視点から厳密に考察するために、動学的非効率性とアグリーアビリティの問題を考察し、2010年の中国数量経済学会で報告を行った。現実的な視点から内生的成長を含む経済成長の問題を動学的なフレームワークで考察するためにぜひとも必要な措置であると思われる。 (3)OLDモデルにおいては、人的資本・物的資本の蓄積状態に関する分析をベースに、経済成長と所得分配の長期変動の態様が理論的にかなり明らかにされている。しかし、現実には、ある家計は貧困の罠に陥り、他の家計は裕福になっているという現状がある。九州国際大学の松尾准教授と-緒に先行研究のサーベイを行い、その原因を解明できるような理論的な研究を開始した。
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