2010 Fiscal Year Annual Research Report
高度経済成長の終焉と地域開発計画の変容-沖縄振興開発計画の事例研究-
Project/Area Number |
21530263
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
大城 郁寛 琉球大学, 法文学部, 教授 (40194146)
|
Keywords | 新全総 / 地域開発 / 臨海工業 / 沖縄 / 高度経済成長期後期 |
Research Abstract |
琉球政府が1970年に策定した「長期経済開発計画」の指針となった新全総がどのような地域開発の思想を含んでいたか、それから沖縄が誘致を望んだ臨海工業の特性、業界と官庁との関わりなどを概観したうえで、臨海工業の基本的な条件となった政府の資源政策の転換が地域開発に与えた影響を明らかにした。次に、旧全総において開発拠点に指定され急速に工業化を遂げた茨城県鹿島地区(それは琉球政府に1つの開発モデルを提示したが)を取り上げ、臨海工業基地の建設を巡る国の政策や地方公共団体の主体性、そして工業開発が地域経済や地方財政に与えた影響を確認した。 最後に、高度経済成長によってもたらされた製造業の構造変化、企業活動の広域化やネットワーク化、世界経済における日本のプレゼンスの高まりが、琉球政府が望んだ臨海工業基地を沖縄の経済振興に適しないものにしたことを論証した。すなわち、1つに新全総の遠隔地大規模工業基地構想が示すように国際競争力の観点から、新たに臨海工業基地を設置する場合の規模が琉球政府の想定をはるかに超えるようになった。2つに、臨海工業基地の規模の大型化にも関連するが、そこに立地する素材産業の資本集約化が進むことで雇用吸収力が低下し、沖縄にとって魅力ある産業ではなくなった。また、新たに自動車や家電産業などの加工組立産業が雇用吸収力のある産業として台頭してくるが、この産業の立地は臨海である必要もなく、また公害も発生させないため消費地である大都市の周辺にも工場適地が広がり、臨海にある程度の用地を準備できるという沖縄の工業立地の優位性は失われた。3つに、1960年代後半になると国民が経済成長よりも環境保全を重視するようになり、通産省も臨海工業基地を人里離れた遠隔地に誘導するよう産業立地政策を変更する。産業公害を経験したことのない沖縄でも環境意識が高まっており、環境負荷の大きな重化学工業の誘致が困難になった。
|
Research Products
(2 results)