2009 Fiscal Year Annual Research Report
DGEモデルによる日本の金融政策の実証と最適政策のシミュレーション
Project/Area Number |
21530264
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
飯星 博邦 Tokyo Metropolitan University, 社会科学研究科, 准教授 (90381441)
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Keywords | 経済政策 / 経済統計学 / マクロ計量経済モデル / 動学一般均衡モデル / ニューケインジアンモデル |
Research Abstract |
日本における動学一般均衡(DGE)のマクロ経済モデルを推定する前処理として、今年度はマクロ経済変数のトレンド成分と景気循環成分の分離法の検証をおこなった。というのは、一般的にDGEモデルは、GDPや消費、投資などのマクロ経済変数のトレンド成分を除去した景気循環因子を利用するからである。しかしながら、日本のマクロ経済変数は欧米のものと違い、トレンド成分の構造変化が大きく、従来の分離法が利用できない。 本研究では、Morley et al.(2003)やPerron and Wada(2009)等のトレンド成分と景気循環成分への分離法を日本の実質GDP、完全失業率へ適用した。検証および先行研究から、たとえ同一の非観測成分モデルを利用してもサイクルとトレンドを一意的に特定化することはできず、景気循環成分の周期の長短、振幅の大きさが仮定により大きく変動することが示唆された。さらに急激な構造変化を考慮した混合正規分布をもつ非観測成分モデルで実質GDPを検証したところ、トレンドのショックの混合正規分布に利用される2つの正規分布の分散比が予め特定化されていないと、景気循環成分は周期が短く振幅が小さいものになった。よって、統計的手法のみでは、一意的にマクロ経済変数をトレンド成分と景気循環成分に分離するのは難しいことがわかった。 さらに、本研究では、Harvey and Trimbur(2003)に従い、非観測成分モデルにより、日本の月次マクロ経済変数の単変量の景気循環成分抽出をおこない、また日本の各月次データの多変量から共通の景気循環の抽出とこれらの変数間の位相のズレ幅の推定をおこなった。多変量モデルはValle e Azevedo, Koopman and Rua(2006)のものである。
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