2010 Fiscal Year Annual Research Report
DGEモデルによる日本の金融政策の実証と最適政策のシミュレーション
Project/Area Number |
21530264
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
飯星 博邦 首都大学東京, 社会科学研究科, 教授 (90381441)
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Keywords | 経済政策 / 経済統計学 / マクロ計量経済モデル / 動学一般均衡モデル / ニューケインジアンモデル |
Research Abstract |
22年度は、Boivin and Giannoni (2006)やKryshko(2010)の研究に基づいて、多変数のマクロ時系列データに対して、動学一般均衡(DSGE)モデルという経済学のモデルをダイナミック・ファクター・モデルという統計学のモデルに組み込んだデータリッチ型DSGEモデル(次世代大型マクロ計量モデル)を日本で初めて開発し、この推定および歴史分解等のカリブレーションに成功した。(データリッチ型DSGEモデルの政策への有用性はStock and Watson (2010),およびDel Negro and Schorheide (2010)のマクロ計量経済学のサーベイ論文で紹介されている。) 従来の手法としてBernanke (FRB議長),Boivin, and Eliasz (2005,QJE)が開発したFAVARを使ったインパルス応答による金融政策の効果の推定法が広く知られている。このベースになっているモデルはChristiano, Eichenbaum, Evans (1999)による誘導系VARであったが、私たちが今年度開発したモデルはマクロ経済モデルであるDSGEを明示的に組み込んだものであり、これにより経済的な構造ショックが各マクロ変数の変動にどのように影響を与えたのか、その寄与度を分解できるようになった。この寄与度分解の推定は我々の研究が世界初である。 さらに、このマクロ経済モデルの心臓部として、Smets and Wouters (2003,2007)のモデルにGertler and Kivotaki (2010)という銀行部門と預金者の情報の非対称性を取り込んだ最新のDSGEモデルを加えることで、企業、家計、銀行部門、中央銀行、政府の4経済主体から成る一般均衡モデルへと一般化を図った。これによりアメリカのマクロ時系列データに対してリーマンショックの影響について寄与度分解を行った。この研究については23年度に国内およびアメリカやヨーロッパなどの国際学会へ報告予定である。
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