2009 Fiscal Year Annual Research Report
自然災害における財政の地方分権化および国際的開放度の役割について
Project/Area Number |
21530266
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
外谷 英樹 Nagoya City University, 大学院・経済学研究科, 准教授 (40285226)
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Keywords | 自然災害 / 経済政策 / 財政分権化 / 国際的開放度 / 国際研究者交流 / アメリカ |
Research Abstract |
本研究では、政府の地方分権化および国際的開放度が自然災害における人的被害にどの程度影響を与えるのかが検証されている。政府の地方分権化の指標は、支出面より「地方政府支出の対中央政府支出比」を、また収入面より「地方政府支出に占める中央政府からの補助金比率」の2つを用いている。また国際的開放度に関しては、各国における(輸出+輸入)/GDPを用いた。自然災害における人的被害の指標は自然災害による死者数を使用した。これらの指標を用いて1972年から2005年における100カ国以上の国々からなるパネルデータを使用して、政府の地方分権化、国際的開放度と自然災害による人的被害の関係の回帰分析を行った。 自然災害の人的被害に影響を与えるその他の経済的要因をコントロールした上で得られた結果は、支出面においてより地方分権化された政府構造をもつ国ほど、自然災害による人的被害が少なくなることを示すものであった。一方、収入面においては地方分権化の程度は災害による人的被害に影響を与えていない結果となった。これらの結果は、地方政府にとって重要なのは支出における裁量の程度であることを示唆するものである。一方、国際的開放度に関しては、国際的開放度が高い国ほど人的被害が軽減される結果が得られた。このことは、国際的開放度が高い国ほど、災害時における救助活動に際して、諸外国との連携が容易に行えることや、外国との貿易が活発な国ほど港湾・空港・道路などの交通網が整備されていることより、救助活動を的確に行えることを示唆するものである。また、サンプルをOECD諸国と発展途上国に分けて行った推計では、政府支出における地方分権化が人的被害を軽減させる効果は発展途上国においてより顕著なものであることが示された。一方、国際的開放度が人的被害を軽減させる効果については、OECD諸国においてより顕著である結果となった。
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