2011 Fiscal Year Annual Research Report
自然災害における財政の地方分権化および国際的開放度の役割について
Project/Area Number |
21530266
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
外谷 英樹 名古屋市立大学, 大学院・経済学研究科, 准教授 (40285226)
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Keywords | 自然災害 / 経済政策 / 財政分権化 / 国際的開放度 / 国際研究者交流 / アメリカ |
Research Abstract |
本年度は、昨年、一昨年度に引き続き、政府の地方分権化および国際的開放度が自然災害における人的被害にどのような影響を与えるのかに関する研究に関し、主に昨年度に投稿した論文の改訂・修正を行った。 この論文では、政府の地方分権化および国際的開放度が自然災害における人的被害にどの程度影響を与えるのかについて、1972年から2005年における100カ国以上の国々からなる年次データによるパネルデータを用いた回帰分析による検証が行われている。政府の地方分権化の指標は、支出面より「地方政府支出の対中央政府支出比」を、また収入面より「地方政府支出に占める中央政府からの補助金比率」の2つを用い、また国際的開放度に関しては、各国における(輸出+輸入)/GDPを用いた。更に自然災害における人的被害の指標に関しては、自然災害による死者数を使用した。 自然災害による人的被害に影響を与えるその他の経済的要因をコントロールした上で得られた結果は、政府支出面において、より地方分権化された政府構造をもつ国ほど、自然災害による人的被害が少なくなることを示すものであった。一方、収入面においては地方分権化の程度は災害による人的被害に影響を与えていない結果となった。これらの結果は、地方政府にとって重要なのは支出における裁量の程度であることを示唆するものであり、地方分権化の役割を示すものである。 国際的開放度に関しては、国際的開放度が高い国ほど人的被害が軽減される結果が得られた。このことは、国際的開放度が高い国ほど、災害時における救助活動に際して、諸外国との連携が容易に行えることや、外国との貿易が活発な国ほど港湾・空港・道路などの交通網が整備されていることより、救助活動を的確に行えることを示唆するものである。 以上の研究成果は、自然災害による被害に影響を与える社会的・経済的要因に関して、新たな知見をもたらすものである。
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