2011 Fiscal Year Annual Research Report
フィリピンICTサービス産業の政治経済学-ICT主導型経済成長の可能性と限界
Project/Area Number |
21530269
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
森澤 惠子 大阪市立大学, 大学院・創造都市研究科, 教授 (60137180)
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Keywords | フィリピン / IT-BPO産業 / ICTサービス産業 / ICT主導型経済成長 / オフショア生産 / コールセンター / KPO / コンタクトセンター |
Research Abstract |
1.平成23年度はアキノ政権の2年度にあたり、現政権のICTサービス産業位置づけの変化が見られた。アキノ政権が公表した『フィリピン開発計画2011-2016』では、アキノ政権のフィリピン経済発展に対するICTサービス産業への評価はアロヨ政権よりは低く、大統領の直接の諮問機関であったICT委員会(CICT)も科学技術省の下部組織のOffice Of ICT(OCIT)へと格下げされた。しかしアキノ大統領の就任以降1年半以上が経過する中で、突出して高いパフォーマンスを示しているのはICTサービス産業だけであり、この産業へのPPP(官民協力)という形での政府支援もアキノ政権下でも受け入れられつつある。ICT省の成立法案も2012年2月に上院を通過した。 2.フィリピンのオフショア生産の受入は、アロヨ政権とアキノ政権との政策支援への濃淡があるにも関わらず、米国発の金融危機以降も高水準で経過している。2011年度は年成長率24%、総売上額109億ドル、64万人の雇用を生み出し、GDP比で5%のシェアを占めた。これは米国をはじめ海外からのオフショアが依然高水準で推移していることと示すと同時に、国内の政策支援よりもむしろ海外の需要に大きく左右されていることを示している。しかし今後フィリピンが単なるコールセンターの基地からより高度のKPOの受け入れ基地へと成長していく上で、国内の高度人材の育成が不可欠となり、この点で政府支援、PPPが一層重要となってくるであろう。地方ICTサービス産業の地方展開にもPPPが重要なキーポイントとなる。 3.本年度は10月と2月に2回フィリピンの現地調査を行うことができた。10月にはIOS(International Outsourcing summit)に参加する機会を得、世界の需要状況、競争状況、BPAPの活動状況の報告やアキノ大統領のスピーチを聞くことができた。2月の調査ではマニラとセブでの直近のICTサービス産業の状況を調べた。 4.ICTサービス主導型経済成長の可能性については、ADB、UNCTAD、NBER(National Bureau of Economic Research)の論文をサーベイし、大変参考になった、
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