2011 Fiscal Year Annual Research Report
経済発展におけるICTの進展が所得の不平等に影響を及ぼすメカニズムの解明研究
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21530270
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
片桐 昭司 県立広島大学, 経営情報学部, 教授 (30274418)
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Keywords | 不平等 / 所得格差 / 情報通信技術(ICT) / 経済発展 / 研究開発(R&D) / 技術進歩 / 内生的経済成長 |
Research Abstract |
当初の計画ではICT投資と経済発展の理論的関連付け(モデル化)とその実証性の確認を行う予定であったが、実際は、新しいモデルの構築は行わず、回帰モデルを使用して、実証的にICTの進展が所得格差や経済成長(経済発展)にどのように影響を及ぼすのかという研究を行った。この実証研究では、経済発展とその要因を体系的に整理し、その中にICTの進展の位置付けを明確にし、経済発展過程におけるICTの進展が所得の不平等にどのように影を与えているのかを、OECD諸国を中心に、O'Mahony and Timmer(2009)や種々のデータを使って、多面的側面から分析および検討を行った。これに加えて、世界的規模で所得格差が生じているかどうかを変動係数(σ収束)や条件付き収束(β収束)を用いて確認し、さらに所得の不平等への影響要因(全要素生産性(TFP)および研究開発(R&D))についても分析した。以下、上記で行った研究成果を述べることにする。 (1)1990年代以降、一人当たりの所得は世界的規模で拡大し、OECD諸国に関しても、1990年代以降、所得の不平等の拡大を観察できる可能性がある。(2)所得の不平等と経済成長率との逆U字の関係が1990年代以降に見られる。(3)1980年代から2000年代の時系列データより、イタリアおよび日本を除く対象となったOECD諸国のICTは経済成長に貢献し、対象となったすべてのOECD諸国のTFP(全要素生産性)は経済成長率に貢献している。(4)対象となったOECD諸国、ブラジル、インドおよび中国に関して、ICT投資はジニ係数(所得の不平等の代理変数)を拡大させ、TFPとR&D投資はジニ係数を低下させる。以上の結果はICTの進展が世界的規模で所得の不平等を拡大させることを示唆しているものと考えられる。 上記の研究成果を、トルコで開催された8the International Conference on Business,Management and Economicsにて報告、『九州経済学年報第』49集で発表した。また、前年度の研究成果“Analysis on Technology Implementation and Economic Growth”がUSA-China Business Review(2011)から刊行された。
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