2011 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化時代におけるベトナムのインフォーマル部門と労働集約型工業化の可能性
Project/Area Number |
21530281
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
後藤 健太 関西大学, 経済学部, 准教授 (70454981)
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Keywords | ベトナム / 東南アジア経済 / インフォーマル経済 / 労働集約型工業化 / グローバル・バリュー・チェーン |
Research Abstract |
本年度はホーチミン市のインフォーマルな縫製部門の個別企業への訪問調査を実施した。その結果、下記のことが明らかとなった。 1)ベトナムでは賃金の上昇圧力から多くの輸出志向型縫製企業が仕様や生地などを海外バイヤーから無償で供給され、縫製部分のみを担当する、いわゆるCMT(Cut, Make and Trim)型委託加工による生産流通形態をとっており、デザインやマーケティングなどにかかわっていない。しかしこれに対し、国内市場を中心に担うインフォーマルな縫製企業では、自ら製品企画から資材の調達、縫製までを行っていることが多い。また自社小売店を整備し、衣類品の流通まで担うなど市場形成にまでかかわる企業も少なくない。輸出型縫製企業が比較的単純で労働集約的な組み立て工程に特化していたのに対し、国内市場を中心とした縫製企業は上述のような、より知識集約度の高い機能を担ってきたのである。この結果、縫製工程に関してはより進んだ海外の先進的な設備や生産システムへのアクセスがあった輸出型企業が効率性・品質という側面において強い優位性を発揮したものの、国内市場型企業は市場の不確実性にまつわるリスクが高いが付加価値も比較的高い機能を担うことで成長を実現してきた。 2)賃金水準に関しては、インフォーマル企業の中でもばらつきがあり、基本的には担っている工程の付加価値水準で決まるものである。こうした高付加価値な機能を担う主体でも多くは資本集約的な技術に依存せず、基本的には労働集約的である。こうした点の研究を今後さらに進めることで、産業高度化における労働集約産業の新たな発展形態を模索できると思われる。 上記の研究成果に基づき、2011年度は査読付き国際学術誌への掲載論文3本を含む5本の論文が公刊された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地での調査のアレンジをホーチミン市経済大学に依頼しているが、これまでの協力関係から順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も現地調査によって得た一次データをもとに研究を進めていく予定である。
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