2009 Fiscal Year Annual Research Report
繰り返しゲーム・モデルによる地方分権制における財政政策の協調可能性に関する研究
Project/Area Number |
21530290
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
板谷 淳一 Hokkaido University, 大学院・経済学研究科, 教授 (20168305)
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Keywords | 地方分権 / 繰り返しゲーム / 租税競争 / 地方政府間競争 / 租税協調 |
Research Abstract |
本研究は、地方政府間の静学的租税競争ゲームを繰り返しゲームのステージ・ゲームとして含む多期間にわたる動学ゲームを構築することを目的とする。本年度は、Itaya, J., Okamura, M., and C.Yamaguchi, "Are regional asymmetric detrimental to tax coordination in a repeated gamesetting?", Journal of Public Economics、2008(査読有り)では、繰り返しゲームを用いて、資本賦存量および生産技術が異なる地域間での資本税率に関する租税協調の可能性を分析した。この論文では、すべての国あるいは地域が協調する完全な租税協調(full tax coordination)の可能性を理論的に分析した。本年度は、この研究をさらに発展させて、経済に存在するすべての地域ではなく、一部分の地域間での租税協調め可能性を分析した。すなわち、税率の部分協調(partial tax coordination)がいかなる経済的諸条件のもとで維持可能(sustainability)であるかを理論的に明らかにした。その成果は、Itaya, J., Okamura, M., and C.Yamaguchi, "Partial tax coordination in a repeated game setting?", Discussion Papers 201, Hokkaido University,(査読無し)にまとめられた。全世界の国々が一斉に実施することの合意が必要なFull tax coordinationよりも遙かに現実的で実施可能性が高いと思われる部分協調(partial tax coordination)に関して、現実のEUにおける法人税に関する租税協調や世界の特定地域における複数の国家間の租税協調の可能性を巡って実務家レベルあるいは政策当局者の間で活発に議論されているばかりでなく、実際の租税競争の弊害を少なくするための経済政策の一つの現実的な選択してあると考えられている。本研究が明らかにした税率の部分協調の可能性に関する理論的成果は、先に述べたような具体的な経済政策における指針を得る上でもその意義は大きいと考えられる。また、本論文は国際財政学会(IIPF)、日本経済学会、ソウル国立大学およびバルセロナ大学の経済学セミナーでも発表された。現在、査読付き国際専門雑誌International Tax and Public Financeに投稿中であり、その掲載の可否に関して査読プロセスにある。
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