2009 Fiscal Year Annual Research Report
企業における人的資本投資と株主による監視との関係についての実証分析
Project/Area Number |
21530292
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
伊藤 彰敏 Hitotsubashi University, 大学院・国際企業戦略研究科, 准教授 (80307371)
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Keywords | 金融論 / ファイナンス / 企業統治 |
Research Abstract |
不完備契約理論における経営者努力の重要性、大株主によるガバナンス機能などの株主ガバナンスのあり方、人的資本や無形資産などと研究開発投資、資源ベースの経営戦略論などの各分野における先行研究を幅広くレビューし、人的資本の重要性の高い企業においては、経営者の自由裁量と株主による監視とがトレードオフを起こす可能性を理論的に示すことで実証分析に向けての検証仮説を構築した。 次に東証1部上場企業で特定の産業(技術革新の激しい電気産業、化学産業など)に絞り、小規模サンプルでのパイロット・スタディーを実施し、株主の属性メジャメント、人的資本のメジャメントなどの変数のあり方について検討した。また人的資本の重要性が鍵となる状況の一つとして買収防衛策導入時を選定し、人的資本の重要性が高い企業においては、買収防衛策導入は返って株主の利害を促進するとの仮説を検証することとした。そこで買収防衛策導入時の株価反応を分析する目的でサンプルを収集し、イベント・スタディを実施した。目下の実証結果は、人的資本の重要性が高い企業において買収防衛策導入は株主価値を促進するというよりも、むしろ人的資本に過剰投資している企業が買収防衛策を導入する可能性を示唆している。内生性の問題は別として、人的資本の二面性(企業価値向上に繋がる面と経営者エントレンチメントに繋がる面)を確認する分析結果となった。 最後に包括的な分析用データベースの構築に向けて、直近まで過去10年間の全上場企業の企業別・年度別パネル・データベースを整備しつつある。
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