2009 Fiscal Year Annual Research Report
中小企業金融における企業銀行間関係の行動経済学的分析
Project/Area Number |
21530295
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
青木 達彦 Shinshu University, 経済学部, 教授 (50092854)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
六浦 光一 信州大学, 経済学部, 教授 (00106147)
池田 欽一 北九州市立大学, 経済学部, 准教授 (10334880)
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Keywords | 関係依存型金融 / 企業銀行間関係 / プロスペクト理論 / 状態依存型ガバナンス / メインバンク / ソフトな予算制約 |
Research Abstract |
本研究は、中小企業金融のさまざまな局面を捉えて企業銀行間関係を軸に実態把握と政策形成を目的とするが、21年度には上場企業を対象に特定3業種に限定して、日経NEEDSのFQデータを用いた実証分析を遂行した。関心は、90年代以降パーフォーマンスの悪化した日本経済を、特徴的な関係依存型金融にはらまれた「事後的」及び「事前的」な「ソフトな予算制約」問題として捉え、融資取引関係に軸に、その持つ状態依存型ガバナンス・メカニズムの実態を明らかにし、今後の行方を探ろうとした。そのために売上パーフォーマンスで見た「好調企業」と「経営不振企業」という2つの顕著に異なる「状態」にある2つの企業群に対する融資行動がいかに理解され、対置されるかの実証分析を行い、メインバンク関係比率が2つの状態を分岐させる有意な変数であるとのロジット分析結果を踏まえて、80年代以降金融の自由化とグローバル化、情報通信技術革新といった環境変化の下で機能不全に陥っているとされるガバナンス・メカニズムについて、メインバンク・ディシプリンが果していかなる意味で、いかに機能しうるかを明らかにしようとした。その結果、追い貸しに表れるような市場淘汰機能の麻痺を、行動経済学、とりわけプロスペクト理論における「損失局面におけるリスクテーキング」仮説で捉えてそれを斥け、「選別的、選択的になされる資金繰り救済」として再解釈した。しかし「売上好調企業」に対してなされる短期融資については「事前的」な意味でのソフトバジェッティングの問題がはらまれているとの結果を得た。 企業銀行間関係の分析は中小企業金融を対象に本格的に取り組まれるが、21年度にはそのためのデータベース作りが進められ、長野、愛知両県における倒産企業30社ずつ、それらと対置される生存企業40社ずつの財務データ等が取得、加工整備されたので、22年度にはいよいよ実証分析へと進捗させる。
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Research Products
(3 results)