2010 Fiscal Year Annual Research Report
中小企業金融における企業銀行間関係の行動経済学的分析
Project/Area Number |
21530295
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
青木 達彦 信州大学, 経済学部, 教授 (50092854)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
六浦 光一 信州大学, 経済学部, 教授 (00106147)
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Keywords | 地域金融 / 関係依存的金融 / メインバンク関係 / 状態依存的ガバナンス / 制度的補完性 / 企業間信用 / ソフトな予算制約 |
Research Abstract |
2件の実証分析を遂行した。それらは(倒産に瀕し)「窮境」下にある(非上場)企業、あるいは(上場の同業種企業中、売上で見て上位あるいは下位1シグマに入る)経営「好調」あるいは経営「不振」企業に対する融資取引行動を分析したもので、「事前的」あるいは「事後的」な「ソフトな予算制約」の問題の発生の有無を関心事とし、状態依存的ガバナンス・メカニズムの機能を検証したものである。その結果、愛知、長野両県各30社の倒産企業の分析からは、倒産直前年度の融資行動はそれまでの救済行動が見直され融資が縮小するという「非線形性」が検出され、債務リスクの管理を通じた規律付けが機能していることを見た。加えて企業間信用=受信増による銀行借入に「代替性」が検出されたが、そのメカニズムについて窮境企業が交渉力において弱い子会社へのしわ寄せという形の制度的補完関係を読み取った。他方、「上位」と「下位」それぞれの企業グループに対する融資取引行動からは、ロジット分析から2つの企業グループの分岐に「メインバンク関係比率」が有意であることを検出し、上位企業に対しては短期運転資金がメイン行がプレゼンスの増大を求めて規律を欠いた貸付が生じており、下位企業に対しては、単なる救済融資を超え長期資金の貸し増しを通した業績改善を意図する企業再生が試みられているとの理解を得た。 以上に加え、地域金融機関が地域活性化に果たす役割の分析を行った。それは08年秋世界金融危機により東海圏の経済が厳しい調整を迫られるなか、東海財務局管内の地域密着型金融の取組み実績が06年度までに比し全国比で低評価となった背景を理解しようとするもので、自動車産業に典型的な「摺り合わせ型能力構築」を可能にしてきた垂直統合型分業構造が、知識経済化の到来の下で知識組換えによる競争力発揮に向けて、他産業との協業、中小企業間の新連携の強化が求められる中、地域金融機関の取組みの現状と課題を分析した。
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Research Products
(6 results)