2011 Fiscal Year Annual Research Report
中小企業金融における企業銀行間関係の行動経済学的分析
Project/Area Number |
21530295
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
青木 逹彦 信州大学, 経済学部, 非常勤講師 (50092854)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
六浦 光一 信州大学, 経済学部, 教授 (00106147)
|
Keywords | 企業銀行間関係 / メインバンク制 / メイン寄せ / ソフトな予算制約 / ホールドアップ効果 / 市場淘汰 / 債権者間の調整の失敗 |
Research Abstract |
80年代後半のバブル形成、崩壊後の長期不況はメインバンク制が市場淘汰に果すガバナンス・メカニズムの機能麻痺を表すとされるが、90年代後半の銀行危機は財務危機下の融資先から(非メインバンクに)資金を引き揚げさせ、メインバンクをして融資先の清算を含む効率的な処理をせまり、「ソフトな予算制約」を孕むメインバンク制の機能を刷新する契機となった。本研究は、2000年代前半の上場(3業種)および非上場(愛知、長野両県)企業を対象に企業銀行間関係が市場の規律付けにいかに機能しているかを分析した。とくにメインバンク関係をあらわす2つの比率、メインバンクからの融資額が企業の負債総額とメイン行の貸出総額それぞれに占める比率に照準を当て、以下の結果を得た。(1)売上が好調な(上位)企業と不振な(下位)企業の分岐(ロジット分析)に、それら2つの比率が有意であり(下位企業は借入依存が高く、メインバンク依存度も高い低成長企業)、かつ融資取引行動と「非線形」の関係にある。ここから上位と下位企業とでは、メインからのそれぞれの融資集中比率に応じて(閾値を境に)別個の意思決定がなされており、別個に分析がなされる(行動経済学的アプローチ)。(2)下位の財務危機企業に対する(集中的な融資残高を抱える)メインからの支援は、ソフトバジェッティングを表すというより、清算を含む融資先再編の効率的処理に当たりメイン行が「債権者」として非メインとの間で調整行動を採ることとして理解できる。(3)メイン行と企業及び非メインとの間の融資行動は情報の非対称性、そこからの交渉力によって支配されており、メインバンク変更のあったケースとの対比からも、支払金利が融資集中度の高い場合ほど高くなる「ホールドアップ効果」が生じている。(4)企業の借入総額や(メイン寄せを含む)融資比率の決定に有意に働くメインバンク関係比率は「カウベル効果」を有すると理解されるもので、これは大口債権者が小口債権者に「シグナル」を送り、意思決定を誘導するというグローバル・ゲームにおける「戦略的補完性」の役割と整合的である。
|
Research Products
(5 results)