2010 Fiscal Year Annual Research Report
我が国高齢化社会における医療政策の産業関連を取り入れた数値解析的動学一般均衡分析
Project/Area Number |
21530317
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Research Institution | International University of Japan |
Principal Investigator |
加藤 竜太 国際大学, 国際関係学研究科, 教授 (60242971)
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Keywords | 医療政策 / 人口高齢化 / 一般均衡分析 / 産業連関 / シミュレーション / 財政赤字 / 数値解析 / 医薬品産業 |
Research Abstract |
将来の急速な高齢化社会到来を念頭に置いて、最新の産業連関表を用いながら我が国の医療関連産業を明示的に包括的に取り入れ、様々な医療政策の効果を数値解析的な一般均衡シミュレーションモデルによって体系的に分析した。具体的には最新の2005年産業連関表から独自の社会会計表を作成し、107部門に分かれた社会会計表を作成した。そこではこのように107部門に分けられた産業構造の中でも、特に医薬品産業、民間病院、民間介護保険産業、民間老人ホームなどの民間部門への税・補助金政策を分析の対象とし、様々な税・補助金政策の効果を分析した。また、その分析の大きな特徴は政府の予算負担方法を明示的に考察した点である。多くのシミュレーション分析は予算制約式を明示的に考慮していないが、当該研究はその点を克服している。すなわち、均衡予算を前提とせず、公債発行等によって財源補填する場合と、均衡予算原則に基づき、政府予算制約式を満たすように税・補助金政策を変更する場合に明示的に分けて分析した貢献は大きい。その結果は次の通りである。まず第一に、民間病院等にすでに拠出されている補助金を10%増加した場合、経済全体では974億円ほどの厚生が上昇する。様々な政策の中、民間病院産業への補助金増額政策が一番高い厚生水準が達成される。ただしこの場合、この補助金増加の財源はすべて公債発行によってまかなった場合である。一方、公債発行に頼らず、いわゆる均衡予算原則、それも賃金所得税の増税で同額の補助金増額を行った場合には逆に543億円の厚生水準の低下をもたらすことになる。第二に、医薬産業は民間病院の経済活動に大きく依存し、民間病院への現在政策や補助金増額政策によっても大きな恩恵を受けることがわかった。第三に、医薬産業は医薬産業自体への減税政策よりも、むしろ民間病院産業への減税政策によってより多くの恩恵を受けることが示された。
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Research Products
(3 results)