2010 Fiscal Year Annual Research Report
家族における子の数および教育費の選択と教育政策の役割
Project/Area Number |
21530319
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
釜田 公良 中京大学, 経済学部, 教授 (50224647)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
二神 律子 中部学院大学, 経営学部, 教授 (50190111)
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Keywords | 教育経済学 / 公共経済学 / 家族の経済学 |
Research Abstract |
本研究の目的は,第1に,子の数の過少性と教育支出の過剰性が同時に生じるための条件を検討することであり,第2に,最適な子の数と教育支出を実現するための公的政策の役割について分析を行うことである. 前年度までに,子の数が外生的に与えられているモデルにおいて,親が低所得で厳しい借入制約に直面していない限りは,教育投資は過剰になる可能性があるという結果を得ていた.本年度は,それを発展させ,過剰な教育投資を是正するための公的政策に関して検討を行った.具体的には,公的政策として政府による教育ローン市場への介入を取り上げた.その理由は2つある.第1に,多くの先行研究においては,市場経済の下で教育投資は過小となるため,その対策として教育に対する補助金や公的教育の供給が考えられてきたが,教育投資の過剰性に対してはこうした典型的な教育政策は有効ではない.第2に,本モデルにおける歪みの原因は借入制約(市場から教育資金を自由に借り入れることができない)とサマリタンズ・ジレンマ(将来,親からより多くの所得移転を得るために,子が借入によって過大な消費を行おうとする)であるが,いずれも異時点間の消費配分に関するものである.得られた結果によれば,教育投資が過少となる低所得層に対しては,政府が教育資金を提供し借入制約を緩和する一方で,教育投資が過剰となる中高所得層に対しては借入制約を強化することにより,すべての家族において教育投資を最適にすることができる.中高所得層の過剰な教育投資は,最適な教育投資の下ではサマリタンズ・ジレンマが発生するため,親が子に対して消費を教育投資に振り向けさせようとすることに起因するが,政府が借入規制を設けることによってサマリタンズ・ジレンマを解消することができる. さらに,子の数の内生化し,親と子のインタラクションの中で教育投資が決定されるモデルの構築にも着手している.
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