2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530322
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Research Institution | University of Marketing and Distribution Sciences |
Principal Investigator |
羽森 直子 流通科学大学, 情報学部, 教授 (00238081)
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Keywords | 金融論 / 金融システム / ドイツ:日本:EU |
Research Abstract |
先進国の中で、ドイツは日本と並んで典型的な銀行型金融システムを有してきた国と言われる。そこで、「ドイツの金融システムを構成しているものは何か?」(流通科学大学論集)では、1970年代から1990年代におけるドイツの金融システムの特徴について、機関、機能、制度という3つの観点から考察を行った。具体的には、まず機関という観点から、金融機関と資本市場を中心とする金融市場の特徴を考察した。つぎに、機能という観点から、金融部門、家計部門、企業部門の金融行動、リスク・シェアリングおよびリスク分配、情報公開、コーポレート・ガバナンス(企業統治)について分析を行った。最後に、これらの分析から得られた情報をもとに同国の金融システムの制度的特徴について考察を行った。 その結果、ドイツの金融システムは、当該機関において以下のような特徴を有していたことが明らかになった。(1)金融部門では銀行が圧倒的地位を占めていた。(2)資本市場の重要性は比較的低かった。(3)企業統治に関しては、利害関係者すべての利益が重視され、零細株主の役割は限定的なものにとどまっていた。(4)非金融企業の資金調達は、国内金融と間接金融によるものが圧倒的であった。(5)リスク管理に関しては、株式市場を通じた部門間や同時点内のリスク管理よりも、異時点間の世代間でのリスク・シェアリングやリスク低減の方が中心であった。また、これらの特徴は相互補完的であり、システム全体として一貫性と一定の強さを有していた。 2000年代に入り、同国の金融システムにも資本取引の拡大など大きな変化が生じており、銀行型システムと市場型システムを融合した新しい金融システムが今後誕生する可能性もあると考えられる。
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