2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530322
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Research Institution | University of Marketing and Distribution Sciences |
Principal Investigator |
羽森 直子 流通科学大学, 総合政策学部, 教授 (00238081)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 金融論 / 金融システム / ドイツ:日本:EU |
Research Abstract |
ドイツは1999年に欧州経済通貨同盟(EMU)に参加し、共通通貨ユーロを導入した。それに伴い、同国の通貨及び金融政策に関する権限は、同国中央銀行のドイツ連邦銀行から欧州中央銀行(ECB)に移行した。 ユーロ導入後の10年間は欧州ではそれほど大きな問題も発生せず、経済状況も良好であったが、2009年末のギリシャの財政危機を発端としてユーロ危機が発生した。ユーロ危機には、①「財政危機」が財政危機国の国債や社債を購入している自国およびドイツやフランスなど他の欧州諸国の金融機関の経営を悪化させ、「銀行危機」の危険性を高めている、②財政危機国の国債格下げの度に国債市場や為替市場が不安定化している、③財政危機がユーロ圏の周辺諸国に拡散している、という特徴がある。このようにして、ユーロ危機は財政危機が発生した国々はもちろん、ユーロ圏およびEU全体の抱える構造的な問題を改めて浮き彫りにした。なかでも、欧州の金融システムや欧州中央銀行の金融政策運営上の問題については早急に対処することが求められているが、現在実施あるいは検討されている対策が必要十分なのかどうか判断するには、危機をもたらした原因を正しく理解することが重要である。 そこで、ユーロ危機の発生原因について、財政危機国という一国レベル、ユーロ圏およびEUレベル、世界経済レベルに分けて整理し、分析を行った。その結果、世界の金融経済における民間金融機関の国境を越えた相互依存関係がユーロ危機発生に深くかかわっていたこと、またユーロ導入後も欧州各国の構造改革の進展は不十分であり、ユーロ圏内の非対称性・地域格差も解消しないままであったことがユーロ危機を招いたこと、この点に関してユーロ圏の中核国、なかでもEU最大の経済国であるドイツにも少なからぬ責任があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本およびドイツの個々の金融システムに関する分析に加えて、ユーロ危機というドイツに大きな影響を及ぼしている金融システム上の問題についても、その原因や日本への教訓に関する分析を進めることができたからである。 なお、研究実績に記した研究成果を平成24年度に発表することはできなかったが、現在、「流通科学大学論集」(第22巻、平成25年7月発行予定)に論文を投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、日本とドイツの金融システムの比較分析と、金融システムの評価も試みたい。
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Research Products
(1 results)