2011 Fiscal Year Annual Research Report
大規模債権回収データを利用した中小企業金融の期待損失率推計
Project/Area Number |
21530323
|
Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
山下 智志 統計数理研究所, データ科学研究系, 教授 (50244108)
|
Keywords | 信用リスク / 回収率 / LGD / 新BIS規制 / 代位弁済 / 回収行動 / 担保 / 保証制度 |
Research Abstract |
本研究は、デフォルト確率と回収率の同時推計が可能な信用リスク計量化モデルを開発・提案する。 デフォルト確率と回収率(正確には1-回収率)を同時に評価したものを期待損失というが、その客観的な計量化モデルは銀行経営の安定化をもたらすだけでなく、企業の間接金融を円滑にし、また新BIS規制による国際基準に準拠するためにも有効なものであり、現在金融当局や銀行が必要としている。本研究ではデータから乖離しがちな確率論的モデルを用いず、実データをもとにした統計モデルを構築することによってデフォルト確率と回収率の同時推計を可能にする。さらにモデルパラメータの推計のために、地方銀行の融資・回収データおよび信用保証協会連合会の代位弁済データを用いる。特に、デフォルト確率と回収率の相関関係や、回収に数年間を要した場合の処理などに注目し、従来無視されていたリスク要因の計量化を実現する。 昨年度はデータ提供を複数の銀行に呼びかけ、3行のデータを得ることができた。回収率モデルのパラメータ推計だけでなく各行間の統計的比較を行うことができた。具体的な作業は、 (1)デフォルト確率と回収率の多段階推定モデルの作成 (2)回収率に関する基本統計量のまとめ (3)回収実績の銀行間格差の検証 またこれと平行して、回収率モデルの理論的問題点を整理し、公表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
データの供出銀行が当初の予定よりも多くなり、より複雑で精緻な分析が可能となった。また、回収率推計についても、海外の文献の中に、我が国のモデルに入用できる概念があり、モデル作成の面でも飛躍的な進展があった。
|
Strategy for Future Research Activity |
回収率モデルについては時間変数の取り扱いや、観測バイアスの除去が依然として問題である。実用化にむけて、これらの諸問題の解決を統計的方法によって挑戦する。また、実用に耐えられるモデルが完成したときには、その普及にむけて関係する実務家への広報活動を行う。具体的には、金融庁におけるシンポジウムの開催、地方銀行協会におけるセミナーの実施金融関係学会での発表などである。
|