2010 Fiscal Year Annual Research Report
大正期~高度成長期における農家の所有・生産・生活諸関係に関するミクロ歴史研究
Project/Area Number |
21530327
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
沼尻 晃伸 立教大学, 文学部, 教授 (30273155)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯田 恭 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (20282551)
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Keywords | 農家 / 日記 / 農作業 / 奉公 / 普請 / 地主 / 小作農民 / 土地区画整理 |
Research Abstract |
本年度の研究成果は、2点にまとめることができる。 第一に、継続して進めてきた本研究の中心的課題である,『西山光一日記』(東京大学出版会、1991年)及び『西山光一戦後日記』(東京大学出版会,1997年)に関する考察の中間的な成果の発表とそれに対する識者の批判を仰ぐため,学会でのパネル・ディスカッション(『西山光一日記』からみた農作業・奉公・普請-1925年~1954年を中心に-)を企画・実施した。同パネルでは,日記にみられる農作業,奉公,家屋の普請という農家における労働の三局面に注目し,小作農家の経営や生活を支える種々の社会関係を歴史的に明らかにすることを課題とした。結論として,農作業・家屋の普請双方において姻戚関係にある家との労務提供関係が重要な意味を持つこと,隣村有力農家への奉公が経営資金調達に重要な意味を持ったものの,そのことが出産期をむかえた光一の妻の母胎に負担を招く場合もあったこと,同地区における「自作農建設」の過程とは,耕地所有権の獲得による地主制からの脱却だけでなく,木材・燃料の譲受,畑の借地などにみられた近隣有力農民への物質的依存からの脱却を目指すものであったことを指摘した。 第二に,『西山光一日記』以外に関する対象地として、兵庫県尼崎市とその周辺地域、静岡県三島市,神奈川県小田原市に関する史料調査を、現地の公的機関や国立国会図書館,大阪府立図書館などで実施した。尼崎市については、関係者からの聞取り調査を継続し、昨年度の段階で発掘した兼業農家の日記の翻刻作業を開始するとともに,日記の一部や史料調査で得た史料を用いて,敗戦後における都市近郊の小作農民の農地利用が土地区画整理に及ぼした点を明らかにした。小田原市・三島市については,両地域を比較検討し,1950年代から60年代にかけての工業開発に対する社会の受け止め方の変化を明らかにした。
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Research Products
(5 results)