2010 Fiscal Year Annual Research Report
戦前日本における小農と工場労働者の就業態度:織物業の女性労働者の事例を中心に
Project/Area Number |
21530329
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
荻山 正浩 千葉大学, 法経学部, 准教授 (90323469)
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Keywords | 小農 / 労働者 / 織物業 / 労働供給 / 農業 / 賃金 / 家内工業 / 工場 |
Research Abstract |
下記の3つの課題を遂行した。 1.大阪府南部の農業生産の発展と労働供給 全国有数の綿織物の産地であった大阪府南部の泉南地方を対象として,1900年代末から1910年代初頭にかけて農業生産の発展が小農の織物業に対する労働供給に与えた影響を分析した。当時,この地域では,家内工業から工場制工業へ織物業の生産形態が転換し,労働生産性が上昇したため,織物業の労働需要は急激に縮小し,小農は家内工業の織物生産の機会を失ったが,他方で農業生産力が著しく上昇し,小農の家計収入が増大した結果,小農は織物工場に働き手を送り出すことに消極的な姿勢を示した事実が明らかとなった。この成果をワーキングペーパーにまとめ,改稿のうえ学術誌に投稿した(審査中)。 2.戦前日本の実質賃金の地域別動向 戦前の日本では,小農は工業部門への労働力の主要な給源であり,実質賃金の変化は小農の工業部門への労働供給のあり方を分析する重要な手がかりとなる。そこで,先進地域と後進地域を代表する対象として大阪府と秋田県を例にとって,1890~1930年代における実質賃金の地域別動向を分析し,いずれの府県でも,農業生産の発展によって小農の生活水準が向上するにつれ,小農の工業部門への労働供給が制約され,実質賃金が上昇したことを明らかにした。この成果をワーキングペーパーにまとめ,所属機関の紀要に発表した。 3.徳島県北東部を対象とした資料調査 今年度から,工業化が遅れた結果,工業化の進んだ他の地域へ労働力が流出するようになった地域に注目し,農業生産の発展と小農の工業部門への労働供給との関係を分析する作業を開始した。その一環として,徳島県北東部を対象として農業生産の発展が若年女性の労働市場に与えた影響を解明するため,藍住町歴史館,徳島県立文書館で資料収集を行った。
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Research Products
(3 results)