2009 Fiscal Year Annual Research Report
高度成長期の鉄鋼業における経営管理と労使関係の展開
Project/Area Number |
21530331
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森 建資 The University of Tokyo, 大学院・経済学研究科, 教授 (00116683)
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Keywords | 八幡製鉄所 / 鉄鋼業の労使関係 / 職場闘争 / 経営合理化 |
Research Abstract |
まずこれまでに収集した八幡製鉄所労働組合所蔵の『中委資料』を丹念に分析した。50年代後半に会社が戸畑地区での新鋭設備導入に合わせて生産管理や原価管理に新機軸を導入しようとラインスタッフ制を採用するなどし、そのために各工場と製鉄所中央の関係に変化が生じつつある中で、組合が積極的に職場闘争に取り組んだことが明らかになった。とくに、組合が力を入れたのが労働時間の短縮の柱としての休暇取得問題であったことは、興味深い発見であった。おそらくこうした組合の政策の延長上に1960年代の労使関係の重要なテーマである時間短縮運動、4組3交代制度の導入計画が展開したと考えられる。こうした事実と、この時期組合が1957年のストライキにみられるような賃金闘争に取り組んでいたこととの関連を明らかにする必要も明らかになった。賃金闘争についてはこれまでも八幡労働組合で資料を収集してきたが、鉄鋼労連本部の資料を見る必要が生じ、09年7月には東京の鉄鋼労連本部で数回資料の閲覧を行った。その結果、1950年代の鉄鋼の賃金闘争の実態がより一層明らかになった。年度の後半はこうした資料の検討を進めるとともに、10年2月と3月には八幡労働組合に出張して、1950年代の資料の発掘に取り組んだ。まだ完全ではないが、同組合書庫に収蔵されているファイルを一件一件点検してこれまで見ていなかった資料については複写を行った。このファイル群の点検は今後も継続する必要があると思う。ともあれ、今回の作業で賃金や要員関係で貴重なデータを発見できたのは収穫であった。また3月末の出張時には九州大学の旧石炭資料センターを訪問して、炭鉱関係資料や福岡県労働部所蔵資料を閲覧した。50年代から60年代に八幡製鉄所の労使関係に起きた出来事と、同時期に三池炭鉱の労使関係で起きた出来事を対比する分析視角を持つ必要を痛感したのも本研究にとっては大きな収穫であった。
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