2011 Fiscal Year Annual Research Report
高度成長期の鉄鋼業における経営管理と労使関係の展開
Project/Area Number |
21530331
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森 建資 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (00116683)
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Keywords | 八幡製鉄所 / 職場労使関係 / 団体交渉 / 経営管理 / 春闘 / 職場闘争 / 要員管理 / 原価管理 |
Research Abstract |
本年度は、八幡製鉄所労働組合を中心に資料収集を続行するとともに、最終的なまとめを行った。これまで集めた資料を基にして、1950年代、1960年代の八幡製鉄所の経営管理の展開と労使関係の間にどのような関連が成立したのかを解明した。その結果、1950年代中ごろから進展した経営管理方法に適合的な形に職場労使関係が変容し、今度はそれを基盤として1960年代に新たな経営管理が進展したことを明らかにできた。 より具体的にみると、(1)1951年協約によって、八幡製鉄所では会社側の経営権が確立した。建前としては組合の同意がなくても、会社は広範な経営上の案件を実行できたが、協約に基づく労使協議機構であった生産委員会の運営を見ると、会社側は労働組合側の要望をある程度受け入れて、組合の同意を得て経営を進めていた。(2)それは要員協議に顕著であり、会社は雇用保障を重要視して要員問題に取り組んだ。(3)1955年の日本生産性本部設立前後から、会社は合衆国の経営管理方法を精力的に製鉄所に導入した。(4)八幡製鉄労働組合やその上部団体である鉄鋼労連は、資金闘争を進めるために職場闘争を進めたが、八幡製鉄所ではそれは経営管理の進展を制約するものではなかった。(5)むしろ、1960年以降は、組合側は合理化に反対せず、むしろ合理化の成果の労働者への還元を目指し、労働時間短縮に取り組んだ。(6)会社側もこうした組合の要望を取り入れた。(7)このような労使関係をより強固なものとすべく、1963年に新たな労働協約が結ばれた。(8)労使関係が安定した1963年労働協約体制下で、現場の労働者によるコスト切り下げが強力に推し進められ、そのためにQCサークルや提案制度が展開した。(9)1970年代以降日本の経営の特徴とされたような現場の労働者の積極的な経営参加や能力主義は、このようにして生まれた。
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