2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530332
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
馬場 哲 The University of Tokyo, 大学院・経済学研究科, 教授 (40192710)
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Keywords | 都市政策 / 社会政策 / 英独比較 / 生存配慮 |
Research Abstract |
1.概念史的検討の作業については、「給付行政」概念と「社会政策的都市政策」概念の明確化に努めた。その結果、(1)「給付行政」概念の適用範囲は広いが本来想定されている政策領域はエネルギー供給や公共交通であったこと、(2)ドイツおよび日本の公法・行政法学でも一定の研究蓄積がある「給付行政」は、19世紀以降の都市化・工業化に伴って登場した新たな国家行政の機能を表現する概念と通例理解されているが、自治体は広義の国家の一環をなすものとして給付行政の実施に際して先駆的・直接的な役割を果たしたことが明らかになった。但し、この問題の十全な解明にはドイツの行政法学者フォルストホフの「生存配慮」概念にまで遡る必要があり、「社会権」、「生存権」がいつどのようにして成立したのかという問題とも関連させながら今後詰めていく必要がある。 2.実証的作業については、「給付行政」の代表的分野である都市公共交通の発達・公営化について、1890年代から1920年代にかけての時期のドイツとイギリスに関する資料収集と整理を進めたうえで、その社会政策的側面に焦点を当てて「社会政策的都市政策」概念との接合をはかった。その結果、(1)都市公共交通は市街地の拡大と郊外住宅地の開発を促進して低所得層の職住分離を可能にし、分散的定住への道を開いたこと、(2)こうした住宅政策、都市計画を進めるうえで、運賃の全般的引下げ、低所得層に有利な運賃体系、都市計画と連動した路線開設を可能にする都市公共交通の公営化は重要な手段であったことが明らかになり、(3)その延長上にある都市圏の拡大は広域行政あるいは都市計画を超えに地域計画の形成へとつながり、それはイギリスでもドイツでも第一次世界大戦後にほぼ同時に始まった、という展望を獲得した。
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Research Products
(3 results)