2011 Fiscal Year Annual Research Report
計画経済とは何であったのか: ソ連経済発展の貨幣的側面
Project/Area Number |
21530335
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
中村 靖 横浜国立大学, 国際社会科学研究科, 教授 (60189066)
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Keywords | ソ連 / 貨幣 / 資金循環 / 計画経済 / 経済発展 |
Research Abstract |
ロシア国立経済公文書館に所蔵されているソ連期通貨統計資料を発掘し、その資料をもちいてソ連経済発展の貨幣的側面を定量的に分析するという課題は基本的に達成された。ソ連期の通貨管理、金融経済の定量的分析から、貨幣市場、資本市場、為替市場を排除したソ連経済は、必然的に貨幣市場、資本市場、為替市場から得られる情報を不換通貨管理に利用できず、これらの市場において行使されるべき政策手段も持たない。すなわち、ソ連経済が不換通貨を管理するためのメカニズムを本質的に欠いていたことをデータによる裏付けを持って立証できたと考える。ソ連が社会主義計画経済の運営に失敗したのではなく、貨幣市場・資本市場を排除する社会主義計画経済は不換貨幣を管理する機能を欠いているためにソ連の経済運営は破たんした。 予定していたソ連マクロ経済フレームワークによる反事実的シミュレーション分析にまでは到達できなかった。2011年の震災によりロシア国立経済公文書館における資料調査が行えなかったことの影響が大きい。1970-80年代の国家予算データ、ソ連期全期間についての国際収支データはなお欠如したままである。また、1950年代前半の生産国民所得データの発掘が遅れ、この時期に生じた資金循環の変化を定量的に示すことができなかった。この理由で、国家銀行(ゴスバンク)バランスシートによる非現金通貨供給管理の分析、1957-62年のソ連資金循環の再構成、実物経済と金融経済との相互関係の定量的分析という3つのトピックスを3本の論文とするにはいたらなかった。
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