2011 Fiscal Year Annual Research Report
ポンドの衰退とロンドン金融市場の復活:ユーロ・ダラーとシティ
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21530338
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
金井 雄一 名古屋大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (30144108)
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Keywords | ポンド / イングランド銀行 / ロンドン金融市場 / ポンド交換性回復 / ポンド切下げ / ヨーロッパ決済同盟 / 英米金融協定 / ユーロダラー |
Research Abstract |
本研究は、第二次大戦中から1970年代前半までを視野に納め、ポンドの国際通貨からの撤退を、戦後イギリス経済の構造的変化、特に撤退を容認しうる要素が成長したことに注目する視点から解明することを目的としたものである。 まず初めに、英米金融協定(1945年12月調印)と、それに伴って実施されたポンド交換性回復およびその挫折(1947年8月)とに注目し、以下の諸点を明らかにした。英米金融協定における早期交換性回復の約束は見通しがあってしたわけではないこと、ポンド交換性回復は2国間支払協定によりポンドへの制約を緩和し、その対象国を拡大してゆくという方法をとったので、既に47年の早い段階でイギリス当局者は交換性回復の延期が必要であると認識していたこと、にもかかわらず交換性回復を進めたのは、国際通貨としてのポンドの地位が崩壊してしまうことへの懸念があったからであるが、交換性回復の約束を守ったうえで、無理だったということを示して直ぐに止めてしまうという、若干微妙な方針も存在したこと。 次いで、1949年9月の切下げについて、以下の諸点を確認した。49年の切下げについては48年1月には準備が開始されており、切下げ実施までの長い期間にはIMFも含めて多くの外国関係者と協議が行なわれていた。したがってポンド切下げは、ポンドを軸とする多数の通貨の平価調整として捉えられるべきである。ポンド切下げによってイギリスの金・ドル準備は回復し、経常収支も改善がみられたが、そのことが、切下げ後のヨーロッパ決済同盟(EPU)設立交渉においてイギリスがポンド使用拡大を改めて主張し始める背景にあった。
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