2010 Fiscal Year Annual Research Report
ニュー・エコノミーとアメリカ経済の再編--1929年大恐慌期との対比において
Project/Area Number |
21530343
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Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
秋元 英一 帝京平成大学, 地域医療学部, 教授 (00064113)
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Keywords | ニュー・エコノミー / バブル / 1929年大恐慌 / ベンジャミン・ストロング / テクノロジー / 国際金融協力 / 株式投機 / 公開市場操作 |
Research Abstract |
今年度は、昨年3月に行ったニューヨーク連銀資料室でのベンジャミン・ストロング(ニューヨーク連銀初代総裁)文書のコピーの解析と、そこから得られた彼の考え方と行動の軌跡を明らかにしたのが第一の成果である(「ベンジャミン・ストロングと1920年代の国際金融協力」)。そこで明らかになったのは、第一に、国際金融関係において、ドイツ賠償問題のドーズ案による決着が、イギリスをはじめとする諸国の金本位制復帰のための前提を整備したこと、である。その原理の重要な点は、賠償も戦債も「支払い能力に応じて」返済されるべきだという了解である。第二に、ストロングはたしかに金本位制復帰が世界金融を正常化させる必須条件だと考えていたが、その場合、当分のあいだ、イギリスよりもアメリカの金利を低くしておくことがヨーロッパ経済と為替の安定、ひいては貿易面でのアメリカ輸出の増大を通じてアメリカ経済に利益をもたらすのだとの信念をいだいていた。彼のこの柔軟性こそが、制度面の時代的制約にもかかわらず、彼の思想と行動の先見性を約束させた。第三に、アラン・メルツァーが指摘しているように、ストロング自身は、当時のいま一つの時代的制約である「真正手形理論」からは自由であり、したがって、FRBの金利政策が株投機と結びつくとは考えなかった。これらの点は、本年3月における2度目のニューヨーク連銀資料室でのリサーチの結果を解析することによって、もう少し明らかになるであろう。 1929年大恐慌についての近年の研究史の検討の結果、以上の点を1920年代の賃金上昇やテクノロジーの発展、そして政策的選択肢についての論点と交錯させることが可能だと思われるので、最終年度の課題としたい。
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